目から鱗の魚の話 番外編 ファーマーズマーケットの由来とは

能登カルチャークラブ代表  佐味貫義

(平成24.12.10 産直コペルvol.3)

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 日本で路上マーケットといえば朝市や祭りの露店を思い浮かべるが、先日訪れたモントレー市(カリフォルニア州)のダウンタウン(商業地域)で開催されるファーマーズマーケットは観光客や地元の買い物客で賑わう。
 この青空市、200メートル足らずの通りに火曜日の夕方から開催されるが、毎週1万人 近くの買い物客を集めるというから凄い。
 人気の秘密を探ると自然農法による品質の良さと鮮度はもちろん、工場や大量生産の規格品の仕入れモノではなく、野菜農家や兼業夫婦、家族ぐるみの手作りやリメイク商品を買い物客との会話を交えて販売する、まさに日本でいう産直力だ。
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 近年、日本の道の駅でも産直品が多く並び、車で旅する人に限らず、これを目当てに買い物に来る人が増えているが、モントレーではこの様子が昼下がりの中心街の大通りに展開されていると想像すれば、観光客と地元客が来店し易い理由が納得できるのではないだろうか。
 近隣のサリナス平原はじめ、モントレー半島で栽培した野菜、果物など、規格外(不揃いだから人気があるのかも)の農業産品や魚、肉類の加工品を中心に、家具、化粧品、衣 類、装飾・手工芸、雑貨類はじめ、自分たちで作った思い思いの商品や工芸品が並ぶ。
 買い物や見物で行き交う人たちの食欲をそそる、ピザ、メキシカンフーズ、 バーベキュー(焼きそばやお好み焼、綿菓子のようなもの)などのファーストフード店も 通りの端々に出店している。
 また、地元の運営母体である市や商工会議所から要請をうけた市内の学校の子供たちの演奏披露の場として、あるいは街頭芸人たちのパフォーマンスが通りに賑わいを添える。

 一見、色鮮やかな農産品や地域色豊かな商品を自由に商いしているようだが、実はここの出店の条件には アルバラド通りにある固定の既存店と競合する商いは行なわないという決まりがある。
 露店の裏側と既存商店の間には通常の歩道があり、訪れる人はどちらでも行き来しながら商品選択できるため、固定店にとっての集客にも相乗効果がある。
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 この青空市、そもそも昔から存在していたわけではなく、地域経済の地盤沈下に端を発している。
 モントレー半島は小説「エデンの東」や「怒りの葡萄」の舞台としても知られる。サンフランシスコの南約200キロメートルの地点にあり、全米オープンゴルフ大会ペブルビーチゴルフ 場群や、モントレージャズフェスティバル、ワールドクラシックカーショー、ハリウッドスターのクリント・イーストウッドが市長を勤めた町「カーメルシティ」や豊かな海岸景観を有する保養地『歴史のゆりかご』として人気も高い。

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 半島の拠点はモントレー市で、人口は約30,000人余、最初の州都が置かれた歴史ある地だ。それまでの町は鰯漁で活況を呈し規模では世界的な鰯缶詰の出荷量を誇っていたが、1940年頃を境に漁獲量が激減し、地域の経済力は一気に低下した。

 市は、この苦境から脱却すべく地元の商業者や商店会の人たちと力を合わせ観光の町へと転身、かつての缶詰工場の跡地や海岸沿いにフィッシャーマンズワーフを中心とするレストランや土産店、ヨットハーバー、リゾートホテルなどの観光施設を配置し、近隣のサンフランシスコからの誘客をはかった。
 一方市内のダウンタウンでは、年々増大する市外地への居住者の移転に伴い、郊外型ショッピングモールに客を奪われ、街中では空き家、空き店舗が目立つようになり、日本の地方都市に見られるドーナツ化現象が起きていた。
 当時のダウンタウン・アソシエー ションの事務局長は市長、市議会に対しダウンタウンに人々がカムバックするように再開発を求めたのに対し、町の中心部が廃れることで町全体の印象が悪くなるのを懸念した市はアソシエーションに対し年間5万ドルの援助金を出し、自分たちの知恵と責任で復興プランを立てることを要請した。さまざまの提案が模索された結果できたのが、青空市の初期構想であった。「住んでいる人には、何かがいつも行なわれている。やって来る人には全ての人が楽しめる要素を含んだ開発を」を実行のコンセプトとし、自ら復興のプランを立てたという。
 この復興アソシエーションは、行政、地主、商業者たちで構成され、商店街から年間の広告予算を捻出し、繰り返し広くこのマーケットの存在をアピール(マーケティング)することで、今日ではモントレー市内の商店街の年間売り上げの重要部分を占めるようになった。マーケットの開催は市、市議会、市警察の強力な保護のもとに運営され、開催に あたっては次のような規約を設けている。

●マーケットの開催中は閉店してはならない。
●既存店の前での出店権利を持たせるが、同種のものを販売してはならない。
●自分のための商売と考え独自の販売努力をすること。
●努力しないで泣き言を言う人の責任はとらない。
●有名ブランドの流入はしない。
●次の三つのモットーに基づいてお互いが協力体制をとること。

 1.清潔
 2.安全
 3.フレンドリー

  「融和と競争と協調」のもと、出店しているオーナーの一人一人が自己責任で真剣に取り組んでいるとの説明に、ビジネスの本場アメリカらしさを感じた。

佐味貫義さん
石川印刷株式会社 代表取締役
能登カルチャークラブ 地域情報誌Fのさかな 編集発行人

能登カルチャー紹介
能登カルチャークラブは能登の文化と逸品を全国に広げていくための活動支援を行っている。
魚マガジン「Fのさかな」による「さかな文化」の発信や能登の逸品の普及、環境保全、観光振興や企業・団体の広告・販促支援など、地元企業の協力を得て、「能登ブランド」を日本中に広めていくために活動している。





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