農業経済vol.4 少子高齢化と地産地消

東京農工大学     野見山 敏雄

(平成26.2.10)

 正月に実家に帰省して感じたことがある。近隣に葬祭センターと高齢者福祉施設が多くなったことだ。実家がある地域は70年代に住宅地造成が行われたところで,そのころの世帯主はいま70歳を超えて終活の最中だ。私の両親もともに80歳を過ぎていて,葬祭場は地区の老人会で決めてあるから心配しないようにと念を押された。我がふるさとは確実に老いていた。
  
 日本の人口は7年連続で減少しており,2013年の人口の自然減は24万4千人と推計され,そのペースは年々加速している。特に生産年齢人口(15歳~64歳)は1995年をピークに減少しており,ピークと2013年を比較すると800万人も減少し,過去1年間で123万人も減少している。そして,生産年齢人口の減少率は1995~2000年の5年間で1%,2000~2005年で2%,2005~2010年の5年間では4%と拡大しているのである。

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 首都圏でも医療や介護が必要な高齢者が爆発的に増える時代が迫っている。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計では,2040年までに1都3県(千葉,埼玉,神奈川)の75歳以上の人口は2010年比で285万人も増え比率で倍増,90歳以上は5・2倍になるそうだ。
 この少子高齢化の傾向は全国的状況だが,山間地域ではより深刻な状況が発生している。
中昨年11月末に本誌編集長の毛賀澤さんと一緒に調査した直売所は,年々高齢化のため出荷する人が櫛の歯が抜けるように減っているという。直売所の新規参入者はほとんどおらず,その手立ては無いと言うことだった。このような悩みを持つ直売所は多いのでないだろうか。日本農業に共通した問題である。


食料の国内仕向量の推移
食料の国内仕向量の推移
  食料供給の問題と並進して,食料需要量の減少も起きている。前述した生産年齢人口は労働力と食料消費の中核をなすものだ。つまり,人口減少が進む中で高齢者の比率が高まると,より食料消費の減少量が増すことになる。結果として,食料の国内仕向量(国内生産量と輸入量の和)に影響することになる。 穀物は1987年の40百万tをピークにして減少傾向にある。野菜も1987年の18百万tをピークに同様の傾向を示している。その他の品目も停滞または減少傾向を示している。つまり,国内の食料需要量そのものが縮小しているのである。
農産物市場問題を論じる場合,これらのことは無視できない重要な論点である。
 
 さて,このような状況下で地産地消を進めるというのはどういうことなのか。供給も需要も減少するなかで活路はあるのか。それは輸入代替を進めることだろう。輸入農産物はカロリーベースで6割以上もある。穀物(飼料を含む)に至っては重量ベースで75%を輸入に頼っている。外国産から国産に少しずつでも置き換えて自給率を高めることは重要だろう
おやきの皮も国産小麦で作られると良いなと思う。いや,原料100%国産のおやきが食べたい。無理かな。

野見山敏雄さん
東京農工大学大学院農学研究院教授
東京農工大学で教鞭をとっており、最近の研究テーマは、半商品経済を組み込んだ農林産物の生産と流通に関する総合的研究である。主な著書には、産直商品の使用価値と流通機構(日本経済評論社)や食料・農業市場研究の到達点と展望(筑波書房,共著)など多数。2012年11月より地産地消優良活動表彰審査委員会・委員を務めている。


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