直売所に向けた野菜作り

今年の異常気象に思う

(平成26年10月10日 産直コペルvol.8)
                 有限会社コスモファーム 代表 中村敏樹

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 今年の天気は本当に異常です。7月までは猛暑・・ああ今年も暑い夏なのかと思いきや、8月の台風以降西日本は毎日雨です。それも数日間に2000mmを超えるような大雨が降り各地で大きな災害が発生しています。毎晩のように激しい雨が降り農作物の被害もかなりのものだと思います。
私の住む高松でもお盆明けの胡瓜の相場が4キログラムで13000円・・1本300円、レタス産地の長野県では雹の被害もかなりあったようです。
需要と供給のバランス!お盆のような需要期に野菜がないわけですから大変な状況です。
平地では大雨の冠水により根腐れや日照不足で野菜の出荷が極端に少なくなっていました。このような状況はおそらく今年だけのことではないように感じます。日本中が熱帯化してきているわけですから農業もその変化に着いていかなければいけません。何もバナナを栽培することはないでしょうが、栽培品目を変え、作型を変えていく必要はあるのではないかと思います。リンゴの産地も徐々に標高の高いところに変わり、お米のブランドも北上しつつあります。
北海道でも梅雨があり、猛暑や長雨が続くことが多くなってきました。その変化になかなか着いていけないのが今の農家です。

確かに農業は他の産業に比べ時間がかかります。結果が出るまでには半年あるいは一年以上の歳月を要し、産業としては実に効率が悪くその割に売り上げが少ないのもこの農業の特徴かもしれません。
だから植物工場が必要だ!!こんな野菜の高値が続くと必ず出てくる言葉です。しかし、災害を受けずスピーディーに出来る植物工場の野菜が果たして美味しいのか?また、この植物工場の話が出るのは野菜が高いときだけ、それ以外の時にはほとんど話題にも上らないのが現実です。設備投資もランニングコストも大きな野菜工場は農家個人が取り組むにはリスクが大き過ぎますね。

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今年も秋冬作の野菜の作付けの季節がきました。8月には人参の種まき、9月には大根の種まきと決まっていたものです。平年だと水不足で悩んでいましたが、今年の8月はほとんど雨で圃場の準備も出来ません。何とか播きつけたところでも大雨で叩かれたりと散々な状況です。
野菜の相場を予想するなら今年は冬までずっと高値推移ではないかと思います。こんな時に作付けが出来る農家が勝ち残っていくように思いますが、中小規模の農家だとそこになかなか知恵と行動が回らないのも現実でしょう。
 私の圃場でも例外なくこの夏は大変な状況が続いています。8月の台風で被害は甚大。それに加え長雨で圃場は水田のようです。カリフラワー等はすでに苗が出来上がっているのにまったく圃場に入れません。このままでは苗が老化してしまうのでプラグ苗を鉢あげまでしました。その他の野菜も圃場の準備に合わせながら何度も種まきを繰り返しています。こんな努力がきっと数か月先に実を結ぶことになればと思っています。
 また、以前の記事でもご紹介しましたが複数の品目を栽培することである程度のリスク回避も可能になってきます。圃場の状況が悪ければ今年はあきらめる・・のではなく新しい品目にチャレンジするチャンスだと考えるポジティブさも大切な要素でしょう。
 今年の夏、沖縄に生産や加工品の指導に行かせて頂きました。沖縄は台風のメッカです。何度も来る台風に「なんくるないさ!」確かにサトウキビやパイナップルであれば台風に強いかもしれませんが、こういう品目はやはり安いものが多くなります。
沖縄の生産者も新たな農業にチャレンジし、レタスや葉物類を栽培することで近隣の飲食店やホテルとタッグを組み、島内の地産池消に結び付け始めています。
毎日お客様が来る飲食やホテルでは野菜等の生鮮食材は不可欠です。その食材を内地から取り寄せていたのが現状ですが畑はホテルのすぐ横にいっぱいあります。なぜ今まで結びつかなかったのか不思議なくらいです。飲食店やホテルと生産者が互いに応援団を作り、そこに向けて野菜の供給をしていく仕組みこそが理想の地産池消の取組になるように思います。
新たな農業、新たな品目に挑戦する上では必ず売り先が重要な位置を占めてきますが、直売所だけでなく外に攻めることで相手のニーズをとらえ、世の中の変化をいち早く農業に取り入れることが出来るように思います。

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「少量多品目」の栽培体系は一見大変なように見えますが、売り先のニーズに一番近い生産方法です。小規模の農家が生き残る方法としては重要なポイントになりますが、欠かせないのが販路です。
 農家が直接売り込みに行くのは大変!でも全国各地に直売所があります。無駄のない農業をするなら直売所を利用しながら外販に向けての練習をしていくことがリスクも少なく未来に繋がる近道かもしれません。
日本農業は狭い面積で大きな収益を上げるために集約型農業生産をしましょう!ということで施設園芸等がかなり進んできたのも事実です。今年のような大雨が続く年にはハウス園芸は欠かせないと思います。ただ、ここにはかなりの設備投資も必要になってきます。10aのビニール温室でも暖房機等を入れると2000万円近くかかってしまいます。これがガラス温室にでもなれば桁が違ってきます。日本全国北から南まで様々な施設園芸を見てきましたが10億を超えるような施設もあり、経営を見るとどこも先が見えず倒産したり、オーナーが変わったりとほとんどうまくいっているところがありません。なぜでしょうか?多くが売り先を決めずに生産を始めているからです。
市場相場の高値で売り上げ計画を立て、過剰な設備投資の割に売り上げが伸びないのが現実です。ハウスも当然必要ですが設備投資はほどほどに!!
農地のポテンシャルを信じ、繰り返しいろいろ野菜を栽培していく農業も集約的な農業の一つです。年間を通じ様々な農作物に挑戦し、出来たものを無駄にしないことこそがこれから取り組める農業です。
直売所やマルシェが各地にでき価格も自由につけられる時代です。世の中のニーズを掴むためにも様々な農産物作りに挑戦することをお勧めいたします。


中村敏樹さん
有限会社コスモファーム代表取締役
長野県上田市の水稲・養蚕農家に生まれ、香川県大学農学部卒業後、農産物生産指導、流通コーディネートなどを30年以上手がける。


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