【直売所に向けた野菜作り】  美味しい野菜の作り方と見分け方 

有限会社コスモファーム 代表取締役 中村敏樹

(平成 26.6.10 産直コペルvol.6 )

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 前回までは多品目の農産物の生産と加工(六次化)について書かせて頂きました。今回は野菜や果物のおいしい育て方と見分け方法について少し話しをさせて頂きます。
市場流通される農産物は何を基準にして価格が決まるのでしょうか。美味しさや栄養価で決まることはありません。農産物価格は需要と供給のバランスによって決定され、少なければ高値、多ければ安値になるだけの仕組みです。そして規格や等級です。ここから農業の生産方法は大きな間違いに入ってしまったのではないでしょうか。
日本の農業の生産目標は旬を外したものでなければ高値を呼ばないことになります。また、野菜や果物はクリスマスやお盆、お正月など需要期に出さないと価格が出ないため、暖房・冷房・電照などあらゆる植物コントロールをして大きく旬を外したものがほとんどです。結果、一年中出回るため生活者もいつが旬なのかもわからなくなっているのが現状でしょう。そこには美味しいという言葉はほとんど意味のないものになっています。
旬は野菜・果物が一番作りやすく安全で美味しく生産コストも安く栄養価も高いものができます。日本は南北に長く南から北まで桜の咲く時期だけでも数か月のずれがあり、農産物も同じように産地リレーができます。旬を守りながら日本全国の農産物の美味しさや季節感が楽しめれば最高ではないでしょうか。
しかし、それはきれいごとですね!そんなことをして誰が農産物の評価をしてくれるのか?市場では美味しい野菜などほとんど意味がありません。形がよく規格が揃っていて安定供給され、お店のオーダーが多い農産物が正しい野菜作りになっていました。
ふろふき大根には三浦大根・・たくあんには練馬大根・・そんな大根はいりません!お店に並べて場所もとらない青首大根だけで十分です。旬など関係なく一年中出回ることが重要であり、お店の棚を開けないことがお客様の為でありそれがお店の使命です!これではいつまでたっても美味しいものは出てきそうにありませんね。
その点、直売所は大量物流の弊害を少し原点に戻すことができる売り場ではないでしょうか。美味しく魅力のある農産物を作る農家のものはいち早く売れていきます。それだけ生活者も味に敏感になっていて生産者を特定できる売り場を求めていたということはないでしょうか。
さて、美味しい野菜はどんな野菜なんでしょう。売り場にそんな表示は何もありません。生活者のみなさんが目利きにならないと美味しい野菜は選べません。私は長らく野菜ソムリエを育てるための講師をしてきました。皆さんに野菜の美味しさや魅力について伝えてきたつもりです。今回は生活者目線で春野菜の選び方、生産者目線で美味しい野菜の作り方についていくつかご紹介いたします。

トマト


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トマトは美味しさが一番はっきり出る野菜かもしれません。
まず、トマトには二つのタイプがあるのを知ることが大切です。そこに含まれる色素(リコピン)の量により赤系トマト・ピンク系トマトに分かれます。
日本人が食べているトマトのほとんどがピンク系トマトです。ピンク系トマトは完熟すると柔らかくなってしまうのでこれからの収穫は青い状態で収穫されます。青で収穫されたトマトが流通の段階で色が回り、みなさんが買うときは真っ赤なトマトになっているわけですが、そこにはほとんどリコピン(機能性成分)は含まれません。リコピンは樹上で完熟することで含有量が増えます。夏のトマトこそ「真っ赤なウソ!」・・ただし、直売所で販売されているトマトは農家の方が畑で完熟したものを収穫して出されるわけですから市場流通のものとは訳が違いますよね。
トマトが本当に美味しく健康に育つのは日本の冬のハウスものなのです。この時期になるとフルーツトマトが出回るのはじっくり時間を掛け固く完熟まで樹上に置けるためです。 美味しいトマトはじっくり育ち比重が重くなります。トマトを水の入ったボールに入れてみてください。沈んだものは糖度が6度以上あります。浮いてしまうものはそれ以下です。実に簡単な見分けです。時間をかけて育てると写真のようにトマトの部屋数か増えます。お店で売られているトマトと比較するとその数は歴然です。また、美味しいトマトはゼリーの部分が緑色をしています。ゼリーが緑のトマトは外見上黒く見えます。トマトを買わ
れるときにはできるだけ赤黒く固いトマトを選ぶのがポイントです。もちろん星状の線が出ているのも見分けの一つです。

ジャガイモ


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これから春ジャガイモの収穫時期になってきます。最近はトマト同様ジャガイモもいろいろな品種が出回るようになりました。先日農家のみなさんの畑を回ってきました。まだ地上部が青い段階で掘り取る方もいますが、ジャガイモは気温が25°を超えると休眠状態に入り地上部が枯れてきます。ここが収穫のポイントです。その前に収穫すると未熟になって煮たときに芯が残ります。早く出した方が高値で売れる・・そんなことも考えますが、買われるみなさんのことも考え収穫の適期を守りましょう。また、ジャガイモや大根などは赤土で栽培されたものが明らかに美味しいものになります。赤土の粘土鉱物は肥料の吸着バランスが一番よく野菜を美味しく育てます。売り場に「赤土で育てた!」と表示があったらこちらもお勧めのものになります。

 

ソラマメ


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これからソラマメの季節です。年中出回り本当の旬がわからなくなっていますが正に5~6月が旬です。サヤに2~3粒豆が入りエメラルドグリーンの魅力的な豆です。日本人はしっかり完熟しパンパンに張った豆を好む方が多いように思いますが、少し若い豆を食べてみるとこちらもやみつきになります。ちなみにソラマメの芽の部分が黒くなっているものは収穫遅れで食べると粉っぽく感じます。料理人の方からはもっと若い豆を下さいとの要望が多いのですが、しっかり実が入った方が収量が多くなるので生産者はなかなか取り組んでくれません。生食であればイタリア種のファーベなどがお勧めかもしれません。
お店で選ぶときは莢が新鮮でビロードのような柔らかさがあるものがお勧めです。剥き身で売られているものは鮮度も栄養価も落ちますから出来るだけ莢着きのものをお勧めします。

スナップ


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莢を食べるのがキヌサヤ、莢と豆を一緒に食べるのがスナップ、莢が硬くなり豆だけを野菜として食べるのがグリーンピース、完熟し乾燥されると野菜から穀物に変わります。
一般的にスナップは豆が入らない方がいいような言い方をされますが畑で採れたスナップを食べ比べると豆が入った方がずっと甘くて美味しいことがわかります。生で食べると豆の甘さにびっくりです。ただ完熟に近くなるわけですから筋はしっかり取りましょう。直売所などでいろいろな状態のスナップを茹で試食するだけで随分売上が上がると思います。みなさんに野菜の魅力を伝えるのもこれからの販売戦略だと思います。


中村敏樹さん
有限会社コスモファーム代表取締役
長野県上田市の水稲・養蚕農家に生まれ、香川県大学農学部卒業後、農産物生産指導、流通コーディネートなどを30年以上手がける


 

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