【直売所に向けた野菜作り】   売れる農産物・加工品のヒント

有限会社コスモファーム 代表取締役 中村敏樹

(平成26.4.10 産直コペル vol.5)

 前回までは農業の六次化についてお話しをしてきました。今回はその基本である農産物の生産方法、品目、それを使った加工品のポイントについてお話しをさせて頂きます。

コスモファームの鮮やかな野菜達
コスモファームの鮮やかな野菜達
  先日、弟子の新規就農者からメールが届きました。三年前から京都で農業を始め、私の講演会を聞き「多品目生産」を始めた青年です。近隣の農家やJAの指導を受けながら始めた農業にいろいろなトマトやナスをプラスしたところ、直売所などでも上々の評価を受け、レストランの取引先もいくつか出来てきたようです。ところが近隣の農家からは「調子にのるなよ!」などかなり冷たくされしばらくおとなしく農業をしていきますとマイナスの話しをしていました。しかしやっぱり自分の農業を考えたときに人と同じことをしていたのでは生きて行けないと思い直し再度多品目生産に取り組みたいので苗や種の相談をさせてくださいとのことでした。

タイトルなし
  新規就農を目指す中、将来の展望が見えない方はまだまだ多いと思いますが、やはり新しい考え方や生産方法を取り入れていくことの重要性を感じます。
 
 私のところも春夏に向け苗の生産や種まきを始めています。今年はナスを15種類、トマトも15種類、ジャガイモは50種類、ズッキーニやカボチャもかなりの種類を栽培するつもりでいますが、それを単品で売るのではなく「セット」で売ることで意外に人気が出ています。ナスとトマト、ズッキーニを組み合わせて「ラタトゥーユセット」で販売すると売れ残るものが少なくなります。また、小さな面積で何種類ものレタスを植え収穫は葉をかきながら10種類ほどで組合せ「サラダセット」を作ります。出来るだけカラフルなリーフレタスで組み立て、野菜の花やハーブなどをアクセントで入れるだけでお客様の購買意欲を掻き立てます。販売はアイデアとビジュアルそして実践です。どこにもない商品を作るにはまず栽培することが一番です。JAや市場、お店で売られているものだけが野菜ではありません。自らのアイデアで新しい野菜や商品を作り上げることが売り上げ向上に結び付いていくのではないでしょうか。

レタスセット
レタスセット
 日本は四季がありそれぞれの季節にいろいろな農産物が出てきます。当然野菜や果物にも旬があり、誰でも旬の野菜が美味しいことも理解していますが、農業だけを考えた場合、旬に出荷していたのではお金に繋がりません。そこで日本の農業は「旬を外すこと」がより高収入を上げそのことが優秀な生産方法とされてきました。しかし、やはりこのような農業には大きな問題があり環境負荷が大きくハウスなどの施設や燃料も必要になり、何より美味しさや機能性に欠けた農産物ばかりになってしまいます。一般市場では美味しい野菜の評価などまったく意味がありません。規格が揃っていて安定的に供給され使いやすいこと、そして旬の先取りが重要な価格決定要因になっています。種苗開発も耐病性と収量栽培環境適正が広くなること、そして規格が揃いやすいことを目標に開発がおこなわれていますが、消費者がそれを望んでいるのではなくあくまで売りやすくシステム化しやすい農産物が良いものとされてきた為です。
 
 そろそろその問題点に気が付くことも重要です。小規模農家が青首大根やキャベツを作っても売り上げ向上に繋がることはほとんどありません。また価格が暴落しても指定産地になっていない為に保険の対象にもなりませんから小さな産地は消滅の一途を辿ってきたわけです。このような農業に再び光を当て、美味しい野菜を栽培することが私の楽しみです。

ミニ野菜種子
ミニ野菜種子
 今年は沖縄の仲間からもどんな農産物を栽培したらよいかよく相談されます。ソラマメやトマトで何を作ったらいいのか・・「ソラマメは是非ファーべというイタリアの品種を播いてみてください!生のファーべと白ワインはこの時季のイタリアの風物詩のようです。トマトは桃太郎のような大玉品種ではなくいろいろなカラフルトマトを栽培してみてください!」最近はこのイタリア種のソラマメで地元のレストランとコラボが出来たようです。またトマトも一種類だけでなく何種類か混ぜることによってマルシェなどでも完売しているようです。
 旬の時期に同じ野菜を作るのではなく品種を変えるだけで随分と売れ方が変わってくるものです。大根は白と決めるのではなく赤・緑・黒と様々な品種を作り、その使い方まで説明することでより消費者の購買意欲を掻き立てます。それぞれを単品で売るのではなくカラフル大根のミルフィーユやカラフル大根おろしといった使い方まで説明することで飲食店にも販路開拓の足掛かりにもなります。
 
 購買意欲を掻き立てるにはまずビジュアルの重要性を感じてください。またおしゃれ感・使いやすさとともに農産物の色には機能性成分が多く含まれこの成分を差別化のツールとすることも忘れないようにして欲しいものです。紫にはアントシアンやポリフェノール、赤にリコピン、黄色にはベーターカロテン・・見た目にも鮮やかな旬の農産物にはそれだけの価値が十二分に含まれています。生産者もただ農産物を栽培するのではなく美味しさや食べ方、そして栄養価・機能性などについても勉強していくことが大切ですね。
 
 農業は土地にしがみつき村社会を無視できない産業です。しかしこの時代農村環境も大きく変化し兼業農家が増え近所の協力意識も軽薄になってきています。その代りにネットツールが発達しより広く情報を得ることが出来るようになりました。仲間は何より心強い味方です。栽培品目・加工・販路など様々な問題を解決するには日本中あるいは世界中にアンテナを張ることも忘れてはいけませんね。
 「野菜が変われば人生も変わる!元気ですか!」どこかで聞いたようなフレーズですがまさにその通り。様々な野菜を少量多品目栽培することで販路開拓や食べ方・売り方の工夫も必要になります。残った野菜も大量にあるわけではないので加工のロットも多くありません。マルシェや直売所で売れるレベルからのスタートとしてはうってつけではないでしょうか。畑の野菜をいかに無駄にせず差別化していくことがこの農業スタイルの重要なポイントです。このような農業から今後の展開を考えれば新規就農者や小規模農家でも十分専業として農業経営が成り立つのではないでしょうか。

 先日都内で「にっぽん伝統野菜フェスタ」が開かれ全国各地の伝統野菜が展示されましたが、消えゆく地方の伝統野菜にも直売所やマルシェは不可欠な売場です。地方の伝統野菜はクセがあり収穫量は少なく使い方がわからないことから広がりがありませんでした。対面販売で野菜の特徴や料理方法、試食などを説明することで消費者に興味を持って頂けます。少量多品目野菜や海外の野菜も含め美味しい食べ方などの情報が解れば今まで光の当たらなかった野菜も十分な可能性を秘めた農産物です。そろそろ種蒔きや植え付けの時期になってきました。今年は是非そんな野菜をみなさんに作って頂きたいものです。栽培方法・使い方・販路・加工などいろいろなことをお気軽にご相談下さい。仲間は大切ですよ!

中村敏樹さん 有限会社コスモファーム代表取締役
長野県上田市の水稲・養蚕農家に生まれ、香川県大学農学部卒業後、農産物生産指導、流通コーディネートなどを30年以上手がける。



産直コペル申し込み

産直コペルのお申し込みはこちら! 年間6冊3240円(税・送料込み)です。

産直新聞

長野県版フリーペーパー! 直売所や道の駅で見かけたら手に取ってみてくださいね。

特別プロジェクト

信州の「環境にやさしい農業」実践直売所育成プロジェクト 推進中!

平谷村地域おこし協力隊facebook

人口480人。長野県で一番小さい平谷村で活動する地域おこし協力隊の活動記録