【プロジェクトレポート】「マイラベル」で独自の農家独自のブランドを創ろう

   ー道の駅今井恵みの里 (長野県松本市)ー

<平成26.6.10 産直コペルvol.6)

 本誌ではこれまで「農産物」へのラベル貼付などによる様々な効果について考察してきた。生産者の思いや農産物の特徴などを書いたラベルを貼付、それによる販売効果についてのヒアリングなどを行った結果、多くの消費者が、ラベルやPOPを頼りに、もしくは背中を押されてより良いもの選び、購入しようとしていることが分かった。逆に言えば「ラベル」は農家の名刺のような存在であり、消費者との繋がりを持つ最初の窓口でもあるのだ。
 本号からは、6次産業化の目玉としても位置付けられている「農産加工品」に主に目を向け、各直売所や農産加工所の「ラベルづくり」にまつわる話題を順次報告していくこととした。
 本号では、長野県松本市に居を構える「道の駅今井恵みの里(松本市今井)」で進む、農家の「マイラベル」づくりの取組みと、その裏側にある意図、そしてそれらがもたらす効果についてレポートする。
【産直新聞社ラベルプロジェクト】


直売所を拠点に6次産業化を進める


 今井地区は松本市街地より車で30分、松本市最大の農業地帯であり、リンゴやブドウ、ナシなどの果樹類栽培が盛んな地域だ。
 道の駅今井の開駅は2009年。今井地区の農業振興を図ると共に、松本と福岡や札幌などの各都市を結ぶローカル空港である「松本空港」周辺の活性化を目的に建設された施設だ。直売所のほか、体験農場、食堂、加工施設を有し、「農家の所得向上」を目指した6次産業化を柱に経営を行っている。
 自身も農家である駅長の犬飼公紀さんは、道の駅を舞台に栽培、加工、販売を自ら担い、農家が主体となった6次産業を実践している。


〝売る″そして〝考える″農家に


 「6次産業化こそ、これからの農業の形だと思っている」と語る犬飼さんが進めることの一つが、加工品の「マイラベル」づくりだ。
 同店の加工品コーナーにずらりと並んだジュースやジャムには、多種多様なラベルが貼付されている。
道の駅今井出並ぶ加工品の数々
道の駅今井出並ぶ加工品の数々
生産者のイラストが描かれたリンゴジャム、達筆な文字のコメント入りのジュースなど、多種多様なラベルの加工品が来る人を楽しませてくれる。これらのラベルのほとんどは、農家が自ら考えたデザインだ。同駅ではこうした加工品を各農家一人ひとりの「農家ブランド」として位置づけている。
「〝売る″感覚を持つ、考える農家になって貰いたい」。
「マイラベル」づくりを進めるのは、そうした犬飼さんの考えが根幹にあるからだ。だからこそ、店がラベルづくりの1から10までを行う訳ではない。デザインは自由、写真やイラスト、イメージは生産者に考えて貰い、希望者には、店がラベルとしての形をととのえ提供する―というシステムを取っている。
「売るために何を工夫すべきか、農家自ら考えて貰う」ことを基本としている。その考えは開駅当初から貫かれており、そのためか、2013年に加工所が新設されると、ラベルを作って欲しいという申し込みがいくつも寄せられたという。


400通りの〝農家ブランド〟


 現在、同駅で加工品を作る生産者は約400人を超えるという。年間約4万点、様々な果実を使ったジャムやジュースが作られている。ひとりでいくつもの種類の加工品を作る人も多い。しかし、種類ごとではなく、農家ごとのラベルが貼られているため、どれがどの生産者の加工品なのかすぐに分かるようになっている。ラベルを目印にして、消費者はお気に入りの農家の商品を選ぶことが出来る。
マイラベルの制作を手伝う道の駅スタッフ
マイラベルの制作を手伝う道の駅スタッフ
「農家ブランド」という考えは、直売所だからこそ重要なことだ。「食べて美味しかった生産者のバーコードシールを取っておいて、次の年、『この人のリンゴが欲しい』と訪ねてくる人もいる」という同駅。つまり「農家」がブランドとして通用する形態である直売所だからこそ、オンデマンドでラベルを作ることの有効性が出てくるのだ。


農家の意識形成としてのマイラベル


 売上面でも、ラベルの有無で売上に違いが出るという。やはり、ラベルは商品の顔であると同時に、生産者の顔を消費者が垣間見るための方法のひとつであり、消費者の選択を後押しする存在なのだといえる。
タイトルなし
 犬飼さんの思いに応えるように、ラベルにこだわる農家も多くなってきたそうだ。色味を工夫したり、自ら撮影した写真を持ち込んだり、イラストを持ってきたりする人もいる。品種によって少しずつデザインを変えたり、コメントやイラストなどを販売する中で改善し、工夫していく農家も多いそうだ。
 「加工品の数や種類も増えてきました」と語る同駅スタッフの大槻康恵さん。生産者のマイラベルづくりを手伝ってきたひとりだ。もちろん、農家の所得を向上させるための事業、ラベルには極力コストはかけられないが、こうした取り組みを通して、「ただ作るだけの農業」から少しずつ脱却が実現し始めていることは確かだ。販売面だけでなく、農家の意識形成にも一役買っているのが、マイラベルの取組みなのだ。
売る意識を持った生産者が増え、生産者自ら学び、考えることで徐々に売れ残る品物も減ってきたという。同駅では今後、加工品を東京などへ持っていき、販売することも計画されている。 
6次産業化を柱に、ハード面だけでなくソフト面から商品の底上げを図る。オンデマンドでラベルを作るということ、マイラベル、農家ブランドがもたらす効果は、直売所にとって大きな意味を持つといえるだろう。


プロジェクトキャンペーン始動!
 今年度も引き続き、セイコーエプソン株式会社様にご協力頂き、オンデマンドラベル印刷機TM-C3500を利用した「長野県内直売所・加工所におけるラベルプロジェクト」を行うこととなりました。
TM-C3500は、高速で高画質なラベル印刷が可能な機種。(参考:表2広告)
 地域ブランド創出を目指す各自治体、6次産業化を進める直売所や加工所などには必ず特色ある農産加工品が存在します。
今年度は、このラベル印刷機を利用し、各自治体、各直売所・加工所を舞台に、主に加工品に目を向け、オンデマンドで「ラベル」を印刷することの可能性を探っていきたいと思います。
つきましては、このプロジェクトにご協力頂ける直売所・加工所・各自治体を募集致します。詳しい内容については産直新聞社までお問い合わせください。(TEL0265-82-1260)

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