WORLD REPORT in BRAZIL in ブラジル

大人気! 市民食となった日本食   堀江 剛史

<平成26.6.10 産直コペルvol.6)

日本の直売事情、農業事情を複眼的に視るためには、他国の状況を知ることが重要だ。ブラジル在住のニッケイの新聞記者、堀江剛史さんのブラジル農業レポートを掲載する。


コーヒー、蜂蜜、穀類などの商品も人気だ
コーヒー、蜂蜜、穀類などの商品も人気だ


サンパウロ市内に600店!?の真偽


 ブラジル料理といってみなさんが想像されるのは何だろうか? イメージすらない人が多いとは思うが、やはり一番有名なのは、日本にもレストランがあるブラジル風BBQ、シュラスコ(店はシュラスカリア)だろうか。
 肉の塊を串刺しにし岩塩だけで味付け、客の面前で切り分ける。豪快で肉そのものを味わうシュラスコは、ブラジル人の大好物であり、家庭でのパーティでもよく供される国民食といっていい。
 そのシュラスカリアを提供する店に必ずといっていいほどあるのが、なんと寿司や刺身。国民的料理の食卓にまで日本食が登場するほど、一般的になっているのだ。
 旧聞になるが、ブラジルの大手雑誌『ヴェージャ・サンパウロ』誌(03年7月16日)に「シュラスカリア500店、日本食店はサンパウロ市に600店」の見出しが躍った。ブラジルの国民食を凌ぐほどのブームとなった日本食人気を裏付けるものとして、様々なメディアにもこの数字が登場してきた。
日本貿易振興機構(JETRO)による「ブラジルにおける日本食品市場調査」報告書(2010年)では、「日本食店数はブラジルに少なくとも792軒、そのうち341軒がサンパウロ市にある」とある。
伝統的な日本食から焼きそば、現地化した手巻寿司まで幅広く〝日本食〟と見なし、現地の日本食ガイドブック、雑誌、ネットや電話帳を使って調べたものだという。感覚として、こちらの方が実数に近そうだ。それぞれの数字の信憑性はさておき、日本食がかなり浸透しているのを分かってもらえるだろうか。

ブームの裏に日本移民の歴史



 健康志向の高まり世界的ブーム、現地化などが進むが、他国と違うのはブラジルが100年を超える日本移民の歴史を持ち、その多くが農業に従事してきたことだ。
 世界第三位の規模を誇る青果市場、サンパウロ州中央食糧センター(CEAGESP)のブラジル人関係者が、「60、70年代の市場内の〝公用語〟は日本語だった」というほど、日本人の割合が多かった。
 戦前に創立された日系農業組合は、国内最大規模となり、農業技術の普及に加え、日本からも多くの野菜、果物を持ち込んだ。

鳥居がそびえるサンパウロの東洋街リベルダーデ 日本食材店、レストランがひしめく
鳥居がそびえるサンパウロの東洋街リベルダーデ 日本食材店、レストランがひしめく

 「日本人がブラジルの食卓を変えた」と言われるように、スーパーなどに立ち寄れば、ごぼう、大根、もやし、柿など日本語で呼ばれる食材も多く、豆腐、納豆、油あげなども多くのメーカーが競っている。
進出企業の駐在員らも「治安の問題を除けば、住みやすい国」と評価する。食材の豊富さだけではない。その背景にある日本人へ絶大な信頼による親日性も無視できないだろう。
 地方の郷土料理も楽しめる。世界最大の日系祭り「フェスティバル・ジャポン」は毎年20万人(主催者発表)を集客するメガイベントだ。
 驚くなかれ、ブラジルには47都道府県すべての県人会があり、それぞれが郷土の味を紹介している。熊本の辛子大根、福井の越前そば、広島のお好み焼きー。本誌の発行元「産直新聞社」がある長野県人会は長年、野沢菜を提供し、サンパウロ市民を喜ばせている。

若者に人気、将来性あり!?


手巻き専門店「テマケリア」 立ち食いスタンドも登場
手巻き専門店「テマケリア」 立ち食いスタンドも登場
 今年に入ってから「日本食品に対するアンケート調査」がJETROサイトで公開された。日本人を除く500人のサンパウロ州民を対象に昨年行われたもので、好きな外国料理はイタリア料理に続いて日本料理が第2位となった。
 伊料理を1位に選んだのは回答者の41・4%で、日本料理は30・8%。3位の米国7%、4位の中国料理5%を大きく引き離している。
 伊移民は歴史も古ければ、数も150万人(日本移民は戦前・後で約25万人)で、在ブラジルイタリア大使館によれば、ブラジルのイタリア系は約3千万人(日系人は150万人)に上る。
 その数、20分の1にも関わらず、日本食が2位につけたのは快挙であり、日本食の当地における存在感の強さの現われといえる。

日本食を好きな理由は1位が「味の良さ」で2位が「健康に配慮」。それに続くのが「その国が好き」とか。「国が好き」という理由で料理まで好きというのは、かなり熱烈な日本愛好者ではないだろうか。
リベルダーデでは、和菓子も楽しめる
リベルダーデでは、和菓子も楽しめる
弁当屋は、日本での出稼ぎ帰りの日系人が始めた
弁当屋は、日本での出稼ぎ帰りの日系人が始めた
結果によれば、日本料理を好きな人は20~30代に多く、イタリア料理を好きな人は40~50代に多い。日本食ブームの波に乗って、若い層からじわじわ日本食ファンが増えているようだ。漫画やアニメの影響も少なくなさそうだ。
とにかく、日本という国に対する評価の高さが伺えると同時に、将来性がある分野といえるだろう。好きな料理はというと、予想にたがわず「寿司・刺身」「天ぷら」、3位には意外なことに「とんかつ」がランクイン。「日本食なら何でも健康的」との大きな誤解があるような気がしないこともないが…。
最近は弁当、ラーメン、高級店、居酒屋なども大流行。伴って日本酒、焼酎の消費も増えている。味の方は一言言いたくなるものも多いのだが、今後の発展と多様化が楽しみだ。


プロフィール
堀江剛史(ほりえ よしふみ)
1975年広島県生まれ。南米各地で、日本語教師、飲食店などを経て2002年からニッケイ新聞(本社・サンパウロ)記者。08年「日伯友好の礎 大武和三郎」で海外日系新聞協会大賞。





産直コペル申し込み

産直コペルのお申し込みはこちら! 年間6冊3240円(税・送料込み)です。

産直新聞

長野県版フリーペーパー! 直売所や道の駅で見かけたら手に取ってみてくださいね。

特別プロジェクト

信州の「環境にやさしい農業」実践直売所育成プロジェクト 推進中!

平谷村地域おこし協力隊facebook

人口480人。長野県で一番小さい平谷村で活動する地域おこし協力隊の活動記録