目から鱗の魚の話 vol.4

さかなを通じて豊かな時間をお届けしたい  越田律子

(平成26.4.10 産直コペル vol.5)

七尾湾の牡蠣棚
七尾湾の牡蠣棚


◆日本一豊富な魚種を持つ能登半島



 日本地図の中ほど、日本海に突き出た半島が能登半島です。半島をぐるっと囲む海は、波荒い外浦、波穏やかな内浦の陰陽に区分することができ、大小合わせて70余りの漁港があります。外浦に位置する輪島港や富来港は遠洋漁が多く、アワビやノドグロ、甘エビ、加能ガニ(石川県産のズワイガニ)、フグなどの高級魚が水揚げされます。
なまこの卵巣を干した「ほしくちこ」は高級珍味
なまこの卵巣を干した「ほしくちこ」は高級珍味
 波穏やかな内浦は定置網漁が盛んで、ブリやタラ、アジ、サバなどが漁獲されます。七尾湾はさらに湾独特の魚種、トリガイ、イイダコ、イシサキエビ、ナマコなどが獲れます。牡蠣の養殖も盛んで、日本海側最大の養殖地となっています。
 このように多様な魚種が水揚げされる「能登の里山里海」は、2011年6月、先進国では世界初となる世界重要農業遺産の地域に認定されました。近代化の中で失われつつある伝統的な農法や土地利用、農村文化・農村景観などを保全し、次世代に継承していくことを目的として、FAO(国連食糧農業機関)が創設した制度です。人々が自然と密接に関わり合いながら続いてきた生態系が世界に高く評価されたといえましょう。

◆漁場の能登だからできるおさしみを通販!


 Fのさかな通販は当初、お客様と店舗との直接やりとりというかたちをとっていましたが、店舗の手間を減らすため受注は当社が受けるという形態に変え、同時にネット通販も開始しました。店舗は配送作業のみ、受注から顧客管理、発送連絡や感想のやりとりまで一貫して行っています。
 あるとき編集会議でおさしみを取り扱うというアイデアが出され、品揃えに加えることになりました。
一番人気、能登のお刺身盛り合わせ「能登半島を出前します。」
一番人気、能登のお刺身盛り合わせ「能登半島を出前します。」
 おさかなは好きだけど、調理が面倒、手間がかかるなどの理由で、敬遠されがちな魚料理。とれたての魚を生で食べる文化は、周りを海に囲まれた日本の誇るべき食文化です。能登では沖合いから港までの距離が短いため、鮮度が保持しやすく、さらに内臓をいかに早く抜くかが勝負です。
能登でしか商品化されていない「海ごりの佃煮」
能登でしか商品化されていない「海ごりの佃煮」
 編集部独自の基準をクリアーした鮮魚店で引き受けてもらうことになり、今では看板商品に育ってきています。父の日のプレゼントや、週末に家族全員揃った食卓のごちそうに、と楽しい時間の演出に一役買っています。能登の魚は身が締まっておいしいとの感想も届きます。スピーディーな処理が、翌日(配送は翌日着)でも十分おいしく食べられることの証明です。
 日本全国の沿岸に生息する海ごり(キヌバリ)ですが、食用にするのは能登だけだという「海ごりの佃煮」もリピーターが多く人気の品です。大相撲の遠藤関の祖父、勇さんが作っていることがマスコミに取り上げられて以来、続々と注文が入りメディア効果の大きさを実感しています。

◆気候変動による海の変化と、漁師たちの意欲的な取組み


全国からやってきた若者漁業の未来を共に!鹿渡島定置
全国からやってきた若者漁業の未来を共に!鹿渡島定置
 今まで沖合い1~2キロと比較的近くで獲れていた魚が、近年ではさらに沖のほうまでいかないと獲れなくなってきた。旬の時期に獲れなかったり、少しずつ季節がずれてきている。刀祢建設水産部の船頭さんは話します。日々、海と対話する漁師は、温暖化による気候変動を敏感に感じ取っているようです。
 安定した収入を保障し、漁師の仕事にプライドと意欲を持って働いてもらいたい。そう話すのは、平均年齢33歳、石川県一若い漁師の会社を率いる鹿渡島定置社長の、酒井秀信さん。社長自らスカウトしてきた社員や、漁師を志して県外からやってきた若者たちで浜は活気があふれています。魚の神経抜きなどの新技術を取り入れて商品価値を高め、料亭などと直接取引も始めました。
 
 2社の商品は、「刀祢沖〆船頭おまかせセット」「漁師の一夜干しセット」で、Fのさかな通販でも取り扱っています。一夜干しといえば、塩辛い、生臭いなどのイメージを持つ方も多いと思いますが、鮮度のよいうちに加工したものは、焼いても臭いや煙が出にくく、凝縮したうまみが味わえるので人気です。

◆地元だから知っている隠れたネタ


漁師の朝ごはん お箸から滑り落ちすほど弾力のあるお刺身
漁師の朝ごはん お箸から滑り落ちすほど弾力のあるお刺身
 カニ漁の本場、輪島では香箱ガニが学校給食のメニューに登場します。地産地消、食材の豊かさ、地元ならではの企画で子どもたちへの生きた食育の場となっています。

◆生産者の思いを伝える


 どんなよい素材を持っていても、需要と供給のバランスで築地に運ばれていってしまう。それは仕方のないことです。しかし、築地という国内最大のマーケットを通したものと直送とでは、送料を差し引いても鮮度ともに余りあるものをお届けできると確信しています。市場と消費者の隙間を埋めるのが役目だと思っています。
 現場で働く漁師や生産者の思いや、苦労をきちんと伝え、価格には理由があることを理解してもらう努力を怠ってはなりません。顔の見えない通販だからこそ、この部分をおざなりにしてはならない、お客様に魚を通じて豊かな時間をお届けする。それが私たちが目指す地域貢献です。

当社は印刷業の傍ら、日本のさかな文化を能登から発信するフリーペーパー『Fのさかな』を発刊し、取材で取り上げた海産物、農産物などの産品の通販を行っています。

「Fのさかな」は定期購読を受け付けています
「Fのさかな」は定期購読を受け付けています

プロフィール
越田律子さん
石川印刷株式会社勤務
能登カルチャークラブ『Fのさかな』編集スタッフ
Fのさかな通販 能登のお買い物帖 店長

1965年 京都府生まれ。夫の転勤を機に能登に移り住む。目から鱗の魚体験は、「スーパーのイカ」でした。給料日前のお助け食材、イカをスーパーで買い求めまな板の上で包丁を入れると、吸盤が吸いついてきます。スーパーなのにこの鮮度、さすが能登!と、魚事情の豊かさにいたく感銘を受け、能登を永住の地と定めました。(←本当は夫の実家が能登なので選択の余地なしの後付け理由)

http://notoshop.jp/(Fのさかな通販『能登のお買い物帖』) http://fsakana.noto.jp/(フリーペーパー『Fのさかな』)
経済産業省後援日本フリーペーパー大賞、 2011大賞&コンテンツクオリティ賞 ダブル受賞
2012コンテンツクオリティ賞受賞、 2013入賞
[問い合わせ]〒926-0021 石川県七尾市本府中町ヲ部8-2 TEL:0767-53-2443



産直コペル申し込み

産直コペルのお申し込みはこちら! 年間6冊3240円(税・送料込み)です。

産直新聞

長野県版フリーペーパー! 直売所や道の駅で見かけたら手に取ってみてくださいね。

特別プロジェクト

信州の「環境にやさしい農業」実践直売所育成プロジェクト 推進中!

平谷村地域おこし協力隊facebook

人口480人。長野県で一番小さい平谷村で活動する地域おこし協力隊の活動記録