タネの話  ネパールでの農業実習と未来へのタネ播き 

信州大学農学研究員 助教 根本和洋

<平成26.4.10 産直コペルvol.5)


 
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 この3月に信州大学農学部の学生10名を連れて、ネパールへ農業実習に行ってきた。学生たちにとって、初めて訪れるネパール。中にはこれが初めての海外旅行という者もいた。
正味10日間の滞在は、学生たちにとって、まさに密度の濃い異文化体験であったに違いない。今回は、ネパールで感じたことについて書いてみたい。
 

 海外での農業実習の場をネパールにしたのには、少々訳があった。個人的なことになるが、私は、大学院在籍中に休学して2年数ヶ月間、青年海外協力隊に参加した。その任国がネパールだった。もう20年も前のことだ。
 当時、私は農業省の研究機関に所属し、「高地穀物改善計画」という部署に配属され、オオムギ、シコクビエ、ソバそしてアマランサスの4つの作物の品種改良をすべく試験研究を行っていた。もう一つの重要な任務が、ネパールの高標高地帯を歩いて回っての在来作物種子を収集、保存・整理・評価することであった。

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 ネパールは、「ヒマラヤの国」と言うイメージのある人には意外に思われるかもしれないが、標高100m程度の低地も存在する。したがって、せまい国土の中には亜熱帯から高山帯までの実に様々な農業生態系が含まれ、その多様な環境が豊かな農業生物多様性を育んでいる。そのダイナミックな変化を学生たちにも実感してほしかった。
 
 実習では、私が所属していた研究機関を訪問、視察や、カトマンズ郊外の村の農業体験、野菜市場調査、標高2600mのマルファ村での農業体験などを組み入れた。研究機関では、私が仕事をしていた当時の同僚に案内をしてもらい、また、私が長期滞在していたマルファ村では、村長自らが村内を回って説明をしてくれ、大いに助けてもらった。
 

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 学生たちは、それぞれの若い感性でネパールという国、文化、農業を感じ、理解しようとしていた。うれしかったのは、現地で食べたすべてのローカル食を「おいしい」といって、時には、その辛さや初めての味に声を上げながらも最後まで食べてくれたことだ。この実習では、現地食を食べ、食文化を理解するということも重要なミッションだった。帰る頃には現地で覚えた片言のネパール語を使ってコミュニケーションをとろうとする学生も現れ、頼もしく思った。
 
 学生たちにとって、日本と全く異なる環境に身をおいた経験は、全てが学びの素になったはずである。この実習は、「グローバル人材育成事業」の一環として行われており、実習に参加した学生のうち、一人でも二人でも、将来、農業分野において海外で活躍するものが出てくれればと思う。
 
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 そう、彼ら/彼女らは、未来へのタネなのだ。これからも、そのタネを播き続けよう。その中のわずかでも、この分野で将来花を咲かせ、実をつけることを願って。




根本和洋さん
信州大学農学研究院助教
信州大学で植物遺伝種学をテーマに研究を行っている。作物育種や遺伝資源、雑穀などが専門で、日本だけでなく、ブータンなど海外の遺伝資源の調査も行っている。



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