(平成26.2.10)
実家のある岩手県北上市にUターン就農して2年ほどになります。北上市は、岩手県の真ん中よりやや南に位置する内陸盆地で、県内でも工業の盛んな地域です。農業は、農地面積の9割が米という稲作地帯で、園芸品目では、『二子さといも』という特産品の里芋、アスパラガスの栽培が盛んな地域です。
そんな中でわたくしは、季節に応じた多品目の野菜栽培(40~50種類)で直売をメインに据えた経営をしています。まだまだ試行錯誤と失敗の連続で落ち込んだり、たまに上手くいったりして喜んだりの繰り返しです。人にとやかく言われたり、気を使ったりする必要がないので気楽で良いです、その分何かあったら全て自分の責任になりますが…。
元々、実家は兼業農家だったので、農業の大変さはある程度分かってはいましたが、案の定、都会の喧騒から離れて田舎でのんびり♪、というわけにはいかず…、まぁ、たまにはそういうこともありますが。繁忙期には、朝、日の出前から夜遅くまで仕事ということもよくありがちで、農業は『ワークライフバランス』というより、『ワーク=ライフスタイル』なのだと思う今日この頃です。
ライフスタイルならやっぱり楽しくなければ!と思いますし、大変なだけでは続けていけないので、どうやって楽をしようか(良く言えば頭を使って効率や生産性を上げる)、さらには周りの人が(特に若い人)自分もやってみたいと思われるような、『楽しく』『賢く』『かっこ良く』やれる農業を目指しています。だから、周りの農家や近所の人に「楽しそうだね~」と言われるのが一番うれしいです。
また、就農当初から、同級生(就農20年のベテラン)に、色々協力してもらったり、相談にのってもらっていますが、そんな中でよく話したのが、最近増加している新規就農者の方々に比べ、自分たち農家の子弟はとても恵まれた環境で農業をすることができているのではないのか?ということでした。
すでに持っている土地、機械、設備、そして普通に親から伝えられる技術、そうした恵まれた環境にいる自分たちには、果たすべき責務があるのではないか?
地域の食を支える『地産地消』、地域の子供たちを育む『食育』、そして地域の『豊かな農村風景』を維持し、それを次世代へと繋いでいく、そういった仕事に誇りを持って担っていきたいという思いを強く持つようになりました。
そうした思いを
『〝農〟ブレスオブリージュ』という一つフレーズをビジョンとして、これから地域の仲間たちと共有して農業を担っていきたいと考えています。
高橋 賢さん
1975年、岩手県北上市生まれ。上智大学文学部史学科卒業。
ひょんなことからすし屋で働くことになり、さらには30代半ばで中国に旅行がてら遊学へ。要するに自由人。2011年、実家に戻り意を決して就農。
英語・中国語も話せる、無駄にトライリンガルな農家を目指して再学習中。
『ノブレス・オブリージュ』とはフランス語が語源の、「高貴なるものの義務」という格言で、恵まれた人間にはそれ相応の果たすべき社会的責務があるという意味で使われていて、それに“農”を掛けたものです。