日本の現場から  「秋津野ガルテンは、心のランドマーク」

  秋津野ガルテン   農業法人秋津野 代表 木村則夫 

平成26.12.10 vol.3

和歌山県田辺市にあります、都市と農村の交流施設秋津野ガルテンは、同じ地域にあります直売所『きてら』と連携し、地域の活性化の取組を行っています。地域住民の代表の一人として、家業の農業をしながら、地域のコミュニティービジネスのお手伝いを行っています。
直売所や交流施設の情報発信から、企画立案や事務。時には、仲間と共に廃園の復活やジュースづくり、農園での作業に汗を流しています。



木村則夫さん
木村則夫さん
 私たちの地産地消フィールドは、和歌山県田辺市の市街地から車で約十五分の所にあります〝秋津野〟と呼ばれています上秋津地区です。
農業は、ミカンや柑橘、梅を栽培する果樹中心の農村です。古くから地域づくりが盛んで、平成8年には、農林水産省の地域づくり表彰で天皇杯を受賞した地域でもあります。農村でありながら、住環境の良さから、平成に入る頃から人口が2倍に膨れあがり、混住化も進み、一時はコミュニティーの崩壊も叫ばれるようになりました。そこで、新旧住民同士の交流の推進で回復を目指し、様々な活動やイベントを持続するとこでコミュニティーの回復も見られてきました。地域内のためのイベントが、外からの人々を秋津野に集わせる結果ともなりました。
 消費や市場流通の変化で、地域経済を支えるミカン・柑橘の価格低迷が続くようになり、農家が元気を失う前に、地域づくりの一環として直売所の開設目指し、住民、31名が1人10万円ずつを地域のために持ち寄ったのが、私たちのコミュニティービジネスのスタートです。平成11年のゴールデンウィークにオープン。しかし、半年後に倒産の危機がおとずれました。当時、和歌山では消費者が直売所で農産物を買う習慣もなく、市街地からも離れていることもあり、売上げは伸びませんでした。そこで、地域にある産品を集め「故郷産品詰めあわせセット」200箱を用意して、出資者が自ら親戚や知人縁故をたより販売。倒産の危機を脱しました。今日、この詰めあわせセットは、年間7000セットを超す販売まで育っています。

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 平成15年には、新たに52名の住民の出資を頂き、この資金を元に、現在の店舗に移転。同時に農産物加工施設も併設しました。農家のお母さんたちは、農協や行政などが行う女性活動のなかで、料理や農産物加工の勉強や研究を行っていましたが、経済には結びついていませんでした。そこで直売所に加工施設を併設。加工へのハードルを下げる仕組みをつくったことで、加工グループが誕生し、出来た加工品は、隣の直売所で販売を試してみることも可能となりました。
 加工で頑張るお母さんの姿を見て、お父さんたちが、1年後、ミカンジュースをつくりたいと、住民31名が50万円ずつ出資し、ジュース工場を立ち上げました。これまでジュースなどを造った事が無かったので、加工方法や衛生管理等も大変苦労をしました。

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しかし、販売については直売所という販売店舗やこれまでのネットワークがありましたので、卸売りに頼ることのない販売もでき、売上げも順調に推移しました。以前は、加工用ミカンは農協へ出荷し、農家手取りは、1キロあたり3~5円でしたが、今は、50~70円を農家に返しています。農家は、肥料や農薬代はこれで補えると喜んでいます。

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 『きてら』は現在でも20坪の売場面積で、お客さまが買い物する時間はせいぜい10分です。ここまで買い物に来て観察していますと、隣にある茶屋でゆったりと時間を過ごしている人が多いことに気づきました。また、直売所のメニューにないミカン収穫体験のオファーが入り出しました。直売所の持つもう一つの役割に気づかされました。

 同時期、地元の小学校の移転が決定。市は、移転後、木造校舎を取り壊して宅地として販売する計画。地元は、地域資源でもある木造校舎を整備し、都市と農村の交流拠点を計画。時間をかけ行政を説得いたしました。この計画の出資も住民に呼びかけ、488名の出資者で4180万円の出資金で、平成20年、都市と農村の交流を目指した『秋津野ガルテン』をオープン。

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 気軽に農村に来てもらおうと、農家レストラン『みかん畑』開設。食材は廃園を復活させた畑から採れる新鮮野菜が中心。市販の冷凍やレトルト食品は一切使わないお母さんの手づくり料理です。目の前の木造校舎は料理に味を添えています。
 農村に宿泊施設を設けることで、交流の価値を高めたいと、小さな宿泊施設も併設しました。教育旅行の受入の要請も入りましたが、宿泊定員が32名と小さいため、農家には民泊のお願いをし、現在、14軒の農家民泊の許可を得て取り組んでいます。
 秋津野は、一年中なんらかの柑橘が収穫出来る周年収穫体制も整っており、気軽に農業に出会える収穫体験は非常に人気があります。
 平成22年には、地元の柑橘を使った、お菓子づくり体験工房「バレンシア畑」開店させ、体験以外にも、柑橘を使った商品の開発・販売もおこなっています。
 現在、田辺市周辺は、直売所激戦区となっています。『きてら』は、農家の持ち込んだ商品だけを販売する、本物の農産物直売所にこだわり続けています。仕入れや転送で送られてきた商品を販売しても、農業の活性化や地域経済には結びつきません。私たちは、時間はかかりますが、直売や交流を通じて、農業や秋津野の里のファンづくりを行い、それが経済へと結びつけば、『きてら』のような、小さな直売所も生き残れると信じています。そして、地方における経済循環の小さな歯車を回す役割を背負っているのが、直売所の『きてら』や、交流の拠点『秋津野ガルテン』であり、その役割は、今後とも続くと考えています。

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