都会で味わう田舎の味 vol.5 東京発「にっぽん伝統野菜フェスタ」

地域に埋もれている伝統野菜の認知度を上げ、ブランド化に!

(平成26.4.10 産直コペルvol.5)


「にっぽん伝統野菜フェスタ」が3月10日、千代田区有楽町の東京交通会館で開かれた。今回から始まったこの企画は、農林省食料産業局の「日本の食を広げるプロジェクト」の取組の一つで、(株)ぐるなびが事業委託を受けて開催した。
「地域に埋もれた伝統野菜・食品の普及等推進事業」として、伝統野菜の認知度を高め、販路拡大を狙う初の試みだ。
午前中は、(1)「江戸東京の伝統野菜にみる事例」(2)「食品等に関する知的財産の活用」の2テーマのセミナーがあった。
午後は、会場を移して、流通・小売りバイヤー向けに生産者との商談会。伝統野菜市のワークショップやキッチンカーでのテストマーケティングなどを行った。当日は風が強く、都心特有のビル風も加担してテントが張れない生憎の天候で、急遽、テストマーケティングは、商談会場内同時開催となり、生産者・バイヤー達が会場にあふれた。


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伝統野菜は、独自色を出せる食材だ



ぐるなびによると、このイベントには、全国からおよそ40の生産者団体が集結し、流通やバイヤーは200名以上の申込み(そのうち、外食産業は、およそ140名)があり、約束型商談者も30を超えているとのこと。独自色を出せる食材として、伝統野菜への関心度は高い。
どの生産者も販路拡大を狙っているが、現状では、いくつかを除いては、認知度が低く、世に出ていない伝統野菜もあり、今後の取組みが待たれるところだ。
県内では知られていても、県外に出ると、「それはなに?」となる伝統野菜達。農水省では、伝統野菜を地域ブランドとし、地域の活性化、更には、世界に認められ、販路拡大につなげたいと考える。

第1セミナーに学ぶ
「伝統野菜」って何だ?


第1セミナー「江戸東京の伝統野菜にみる事例」では、江戸・東京伝統野菜研究会会長で、江戸東京伝統野菜の復活に取組む大竹道茂氏が講演した。「地産地消の仕事人」としても名高い大竹氏は、「伝統野菜は、まだ一般に知られていないものも多くあり、地域ブランドとして十分に魅力ある素材なのに生かされていない。このままでは、消滅してしまうおそれもあり、日本文化の損失にもなりかねない」と警鐘を鳴らした
大竹道茂氏の「江戸東京伝統野菜のセミナー」に熱心に耳を傾ける
大竹道茂氏の「江戸東京伝統野菜のセミナー」に熱心に耳を傾ける


伝統野菜とは何を指すのか


その土地で古くから作られてきた野菜で、自家採種を繰り返し命をつないできた(固定種という)もので、その土地や風土に合った野菜として確立されたものをいう。地域の伝統文化や伝統料理にも使われ、親しまれてきた。

なぜ流通しなかったのか


自家採種の弱みは、耐病性に劣り、周年栽培が不可能だったり、日持ちがしない。その季節にしか取れないし、サイズもバラバラなので、生活がかかる生産者は、作りたがらない。
昭和40年代から、国の野菜指定産地制度が導入され、企画通りのサイズで大量生産に応えることができる一代雑種が定着したことも、伝統野菜の廃れにつながっている。

新たに注目が集まる中で


食生活が豊かになり、、最近、地産地消が叫ばれるようになると、伝統野菜が注目され始めた。「外食産業界も、〈差別化して独自色を出せる食材〉として伝統野菜の良さを知り、料理メニューを考案提供したり、加工品に取り組んだり、と自分の足で、生産者との間の流通経路を開く動きがでてきた」と大竹氏は前向きに分析した。
今後伝統野菜の価値を高め、他の野菜との差別化を図ることで、量産はなくとも、流通経路を拡大できるとすれば、日本の中山間地の農家の未来も少しは明るくなるだろう。更には、ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」のおもてなしとして、色を添えることもできるはずだ。


第二セミナーに学ぶ
「知的財産権の取得」



 2つ目のテーマ「知らないと大変!知的財産の基礎知識」では、特許庁産業財産権専門官の白井孝幸氏が、食品の知的財産権について、伝統野菜の普及啓発と海外進出の期待を込めて、語った。
「模倣品や偽造が溢れている昨今、全国に埋もれている産品を掘り出し、幅広く周知するためには、知的財産を取得し、正規のブランドとして構築していくことが求められる」と白井氏。
模倣されないために、ブランディングのやり方とその強化をいくつかの事例を挙げて説明してくれた。結論は、「知的財産を活用するメリットは大きい」。
国は、知的財産の無料相談窓口を全都道府県に設置し、専門家と共同して支援しているとのことだ。(全国共通ダイヤル0570-082100)

生産者団体とバイヤーの商談会、にぎやかに



商談会はとてもにぎやかだった。およそ100種類のサンプルの伝統野菜を前に、生産者から直接に話を聞くことができ、実に興味深いものだった。伝統野菜の名前も、何故そうつけられたかを察することのできる、たのしいものばかりだ。
香川県 珍しい伝統野菜が並び、商談もはずむ
香川県 珍しい伝統野菜が並び、商談もはずむ

香川県産の「葉ごぼう」、熊本県産の「清正の長人参」、山形県鶴岡市の「最上赤にんにく」
八丈島の「明日葉」長野県の信濃町の「ぼたこしょう」など。
 形や色に特徴があり、試食させてもらうと味も新鮮。それは、独自性を放ち、磨けば輝く宝石のようで、販路が確立すれば、期待できる野菜達である。
 生産者の熊本県、清正農園の西孝弘さんも「販路さえ確立すれば、海外でも間違いなく売れるだろう」と自信をのぞかせていた。
東京都 東京ウド
東京都 東京ウド

にっぽん伝統野菜をグローバルな食に


 「今後も、定期的に取り組み、伝統野菜の認知を上げたい。
伝統野菜は、在来種、固定種が対象の為、生産量は限られている。しかも、今は端境期で商品がとても少ない。そういう状況下でも、生産者団体ならびにバイヤーが大勢集結したことは少し驚きで、この企画の重要性を感じた。今後も引き続きこうした機会を持ちたい」とぐるなびの担当者は話した。
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 農水省の大臣官房審議官の櫻庭英悦氏も「今後,にっぽん伝統野菜は、グローバルな形で世界に出ていくことを期待している。」と述べた。
 地域の伝統野菜は、まず個人の食卓に上げて、その伝統野菜にふさわしい調理方法で、その野菜ならではの良さを味わって見ることが適当だろう。そうした行為の積み重ねを通じて、足元から知名度を上げ、流通のチャンネルを増やしながら販売促進をすることが重要だ。
 今後、生産者とバイヤーが手を組み、協力し合えば、にっぽん伝統野菜は、ただの野菜にとどまらず、将来の日本の農業を支え、発展できる起爆剤になれるかもしれない。          文・丸山 祐子

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