直売所を考える together thinking 本当はどうなの? 直売所経営 その3

農産物の値段はどうやって決めるの?

(平成26-5.12.10)

 

このコーナーは、今はやりの直売所について、直売所の経営者、農家、消費者、皆で考えるコーナーです。今回のテーマは直売所で販売する農産物の値段設定の方法です。



農産物の値段は生産出荷者が決める



 農産物直売所は、一般に、販売を行う運営者が、生産者出荷者から商品を預かってお客さんに販売し、それで得た代金のうちから、約束の手数料(通常15%~20%)を差し引いて、残りの金額を生産出荷者に戻す、委託販売という方式で運営されています。販売者が、市場や卸から仕入れ、それに利益を上乗せして価格を決めて販売するという一般の小売業の形とは異なるのです。
 あくまで値段=販売価格は、生産出荷者が自ら決めることが原則。農家が、自分で農産物の販売価格を設定し、その価格で売れるか売れないかを目の当たりにして、評判が良ければ価格を上げて身入りを良くしたり、売れ行きが悪ければ、値段の付け方が悪いのか、栽培が下手で農産物の出来栄えが良くないのかなどを自分で考えて成長して行くのが、直売所の真骨頂なのです。
 もちろん、直売所ではいろいろなことが起こりますから、時には、委託方式ではなく、買い取り方式を採用する場合もあります。でも、これはあくまで例外。基本的には農家が自分の農産物の店頭販売価格を決め、直売所に販売を委託するのです。

直売所は値段が高いの?安いの?




 では、直売の農産物の値段は、スーパーや八百屋さんなどに比べて安いのでしょうか?それとも高いのでしょうか?
 以前は「新鮮・安全・安い」をモットーにして、一般小売業よりもかなり安い価格で販売していることをウリにしている直売所が少なくありませんでした。今でも、「100円市」と自ら命名し、何でも100円で売ること、つまり安さで勝負しようとしている直売所も少なくありません。
 しかし、この頃は、直売所といえども、というか、直売所だからこそ、値段の「安さ」をウリにしてはいけないという考え方も、経営者や生産出荷者の中に広がってきています。
 
 農協出荷に回せない規格外の品を、お値打ち価格で販売して収入を得るという昔ながらの考え方もありますが、それとは違って、こだわりの質の良い農産物を栽培し、それに見合うだけの再生産可能な収入を得られるように値段設定をしよう―という農家が増えてきているのです。
 
 すべてとは言わないまでも、多くのスーパーが価格破壊を進め、農産物までビックリするような低価格で扱われるようになってきている中で、これと対抗して「安売り競争」をするのではなく、着実に、農業振興につながるような、持続可能な値段設定をしようというのが、この頃の多くの直売所関係者が考えているテーマだと言えるでしょう。

誰のメリットになる値段設定か



 ところで、ここ1~2年、全国で急増している超大型の直売所で、周辺の直売所よりもかなり高い値段設定でスタートし、「あの店は高い」という評判があっという間に地域の消費者に広がって、閑古鳥が鳴いているという店がいくつか見受けられます。
 いろいろ話を聞くと、こうした店では、開店以前に「安売りはダメ!再生産可能な適正価格を付けることが重要」と繰り返し強調され、全体として高めの値段設定になったようです。「再生産可能な価格設定」というと聞こえはいいのですが、一方で、こうした店は、販売手数料も周辺の店より高いのが常。結局、大型店であるために初期投資は当然大きくなっており、これを早く回収するために、店の収益を上げなければならず、手数料率の高め設定をしているわけです。
 しかし、高い手数料は、普通は生産出荷者に敬遠されます。しかも、既にいくつも直売所がある中に、新たに大きな直売所を作ることが常ですから、生産者に新しい大型店に集まってもらわなければやっていけません。そこで「高く売れる店を目指す」「高く売れれば手数料が高率でも手取り収入はよくなる」というような掛け声がかけられているのが、どうも実状のようです。
 生産者の収益を保証するために最低販売価格を取り決めている店もありますが、先に述べたような新設大型店の例は、生産者の収益確保というよりも、店の収益確保に重点が置かれているようです。
 これは、前号で紹介したような、生産者にしわを寄せて安売りに走る形とは異なりますが、結局店の収益増を第一義的に考えているという意味では同じ。「販売価格は生産者が決める」という本来の姿から逸脱して、販売者が自分たちの都合で価格決定をリードしている例のように見受けられます。 お客さんの反応を見て、生産者が自ら値段を調整するという柔軟性も無くなってしまうので、閑古鳥が鳴くところにまで行きついてしまうのかもしれません。なかなか難しいものですね。
               (産直新新聞社直売所運営サポートチーム)

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