全国の地域おこしの先進事例が満載 ―産直コペルより―
直売所訪問記 南牧村農畜産物直売所
長野県東部、山梨県との県境に位置する南牧村は、標高1000〜1500メートルの冷涼な地域で、高原野菜の産地として知られる。そんな同村に昨年の6月、村で初めての直売所「南牧村農畜産物直売所」がオープンした。施設自体は村のものだが、運営は同店の隣に本社工場を持つ(株)ヤツレンが行っている。同社の専務取締役の三石博之さんに、直売所や、地域への想いについて伺った。
南牧村農畜産物直売所を運営するヤツレンは、地域の酪農家から集めた牛乳を加工して、牛乳やヨーグルト、チーズなどを製造販売している会社だ。
直売所に入ると、右半分に、ヤツレンの工場で作られた牛乳やヨーグルト、チーズなどの自社商品が並び、左半分には、村内農家が出荷する農産物が並んでいた。
「冬場でも仕入れは一切しませんし、基本的に村で作られたもの以外は置きません。このあたりは果樹農家がいないので果樹も売らない。野菜に特化した直売所ですね」と、三石さんは店の方針を説明する。現在、出荷組合員は50名。皆村内農家だという。
高原地帯ということもあり、周辺にはペンションなども多い。「村で採れた野菜をペンションのご飯で出せるようになった」と、村にあるペンションオーナーさんからも喜ばれているそうだ。
村に直売所が作られたのには、「村独自の直売所を作ることで、観光の一大拠点を作りたい」という狙いがあったという。ただ、実現しようにも村による運営は難しいという状況の中で、以前から自社商品を販売する小さな直売所を持っていたヤツレンに、村から「運営を任せたい」という打診があったのだそうだ。
これを受け、それまでヤツレンが独自に運営していた自社商品の直売所と、村内農産物の直売所を合わせた形で「南牧村農畜産物直売所」をオープンするに至った。
そもそもヤツレンは、平成13年に、前身である八ヶ岳高原農協連合会から乳製品部門の分社化によってできた会社だ。特筆すべきは、当初より一貫して、地域の酪農家から牛乳を、〝全量買い取り〟している点。
現在、エリア内には52戸もの酪農家がいる。50年前の頃と比べると、酪農家の数は減ってはいるものの、素牛(繁殖牛として育成する前の子牛)の値が大幅に上昇するなど厳しい状況の中で、これだけ多くの酪農家が存続しているのには、全量買い取りのスタンスを崩さないヤツレンの存在が大きい。
全量買い取りには、三石さんはじめヤツレンの「地域の酪農を守り、活性化したい」という強い思いが込められている。
「牛乳は、集めたものをいかに早く殺菌するかで、風味も大きく変わってきます。そういった意味で、周辺地域に酪農家さんがいてくれることで、鮮度の良い牛乳をいち早く製品化できるというのが私たちの強みにもなっています」と三石さん。創業以来、地域の酪農家と助け合いながら歩み続けてきた。
直売所の看板商品にもなっている、地元ジャージー牛乳のソフトクリームは大人気で、店舗駐車場には収まりきらないほどの長蛇の列ができるそうだ。1つ味見させていただくと、濃厚なミルクの味が楽しめる一方で後味はとてもすっきりとして、人気の理由がよくわかった。
同店のある地域は、専業農家による高原野菜の大規模栽培が盛んな地域だ。多品目少量栽培をしているような農家は少なく、「直売所を作っても『レタスとキャベツと白菜くらいしか出ないのでは』という意見もありました」と、三石さんは開店前の不安を話す。しかしこの不安は杞憂に終わった。
オープンに際し、村が主体となって、村内の野菜農家の中にジュニア野菜ソムリエを8名養成したのだという。この取り組みが直売所にもたらした効果が大きかった。
「講座を受講した8名が中心となって、熱心に多品種栽培に取り組んでくれました。様々な野菜を出荷するだけでなく、美しい荷造や、食べ方の提案なども積極的に行って、組合員の見本となってくれたんです」。彼らの取り組みや工夫は、他の出荷者の刺激にもなり、現在同店には年間通して約250種もの野菜が並ぶほどになったそうだ。「本当にありがたいです」と実感をこめて感謝の思いを語る。
またこんな話も。どこの直売所でも、夏場にはトマトやきゅうりなどが山ほど出されて大量に余ってしまう、ということをよく聞くが、ここではそうした事態にはならないという。なぜか。専業農家の組合員が過半数を占める同店では、「出荷者それぞれが、どの時期に何を出したら売れるか、戦略を考えて販売しているので、自然と調整されるんです。こちらで指導をするようなことはほとんどありません」。出荷する各農家が販売戦略を持っているという点は、同店の大きな強みだ。
直売所のこれからについて三石さんは、「出荷者一人一人が考え、皆で作り上げる店舗が理想です。結束を高めながら、これからも皆で盛り上げていきたいです」と力強く話した。
(産直コペルvol.25「直売所訪問記」より)
村の初めての直売所 村で作ったものだけを扱う
南牧村農畜産物直売所を運営するヤツレンは、地域の酪農家から集めた牛乳を加工して、牛乳やヨーグルト、チーズなどを製造販売している会社だ。
直売所に入ると、右半分に、ヤツレンの工場で作られた牛乳やヨーグルト、チーズなどの自社商品が並び、左半分には、村内農家が出荷する農産物が並んでいた。
「冬場でも仕入れは一切しませんし、基本的に村で作られたもの以外は置きません。このあたりは果樹農家がいないので果樹も売らない。野菜に特化した直売所ですね」と、三石さんは店の方針を説明する。現在、出荷組合員は50名。皆村内農家だという。
高原地帯ということもあり、周辺にはペンションなども多い。「村で採れた野菜をペンションのご飯で出せるようになった」と、村にあるペンションオーナーさんからも喜ばれているそうだ。
地域の酪農家と共に歩んできた
村に直売所が作られたのには、「村独自の直売所を作ることで、観光の一大拠点を作りたい」という狙いがあったという。ただ、実現しようにも村による運営は難しいという状況の中で、以前から自社商品を販売する小さな直売所を持っていたヤツレンに、村から「運営を任せたい」という打診があったのだそうだ。
これを受け、それまでヤツレンが独自に運営していた自社商品の直売所と、村内農産物の直売所を合わせた形で「南牧村農畜産物直売所」をオープンするに至った。
そもそもヤツレンは、平成13年に、前身である八ヶ岳高原農協連合会から乳製品部門の分社化によってできた会社だ。特筆すべきは、当初より一貫して、地域の酪農家から牛乳を、〝全量買い取り〟している点。
現在、エリア内には52戸もの酪農家がいる。50年前の頃と比べると、酪農家の数は減ってはいるものの、素牛(繁殖牛として育成する前の子牛)の値が大幅に上昇するなど厳しい状況の中で、これだけ多くの酪農家が存続しているのには、全量買い取りのスタンスを崩さないヤツレンの存在が大きい。
全量買い取りには、三石さんはじめヤツレンの「地域の酪農を守り、活性化したい」という強い思いが込められている。
「牛乳は、集めたものをいかに早く殺菌するかで、風味も大きく変わってきます。そういった意味で、周辺地域に酪農家さんがいてくれることで、鮮度の良い牛乳をいち早く製品化できるというのが私たちの強みにもなっています」と三石さん。創業以来、地域の酪農家と助け合いながら歩み続けてきた。
直売所の看板商品にもなっている、地元ジャージー牛乳のソフトクリームは大人気で、店舗駐車場には収まりきらないほどの長蛇の列ができるそうだ。1つ味見させていただくと、濃厚なミルクの味が楽しめる一方で後味はとてもすっきりとして、人気の理由がよくわかった。
出荷者が自ら考え盛り上げる店に
同店のある地域は、専業農家による高原野菜の大規模栽培が盛んな地域だ。多品目少量栽培をしているような農家は少なく、「直売所を作っても『レタスとキャベツと白菜くらいしか出ないのでは』という意見もありました」と、三石さんは開店前の不安を話す。しかしこの不安は杞憂に終わった。
オープンに際し、村が主体となって、村内の野菜農家の中にジュニア野菜ソムリエを8名養成したのだという。この取り組みが直売所にもたらした効果が大きかった。
「講座を受講した8名が中心となって、熱心に多品種栽培に取り組んでくれました。様々な野菜を出荷するだけでなく、美しい荷造や、食べ方の提案なども積極的に行って、組合員の見本となってくれたんです」。彼らの取り組みや工夫は、他の出荷者の刺激にもなり、現在同店には年間通して約250種もの野菜が並ぶほどになったそうだ。「本当にありがたいです」と実感をこめて感謝の思いを語る。
またこんな話も。どこの直売所でも、夏場にはトマトやきゅうりなどが山ほど出されて大量に余ってしまう、ということをよく聞くが、ここではそうした事態にはならないという。なぜか。専業農家の組合員が過半数を占める同店では、「出荷者それぞれが、どの時期に何を出したら売れるか、戦略を考えて販売しているので、自然と調整されるんです。こちらで指導をするようなことはほとんどありません」。出荷する各農家が販売戦略を持っているという点は、同店の大きな強みだ。
直売所のこれからについて三石さんは、「出荷者一人一人が考え、皆で作り上げる店舗が理想です。結束を高めながら、これからも皆で盛り上げていきたいです」と力強く話した。
(産直コペルvol.25「直売所訪問記」より)