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特集 被災地熊本の直売所を訪ねて 問われる交流拠点施設のあり方

今回の熊本大分大震災では、避難所運営において集落の力が大いに発揮されたといわれる。阪神淡路大震災以降度々指摘されてきたことだが、その指摘を受け止めて各地に作り出されてきている地域や集落の防災力・減災力が、目に見える形で発揮されるようになってきたと言えるのかもしれない。
 今回、道の駅・直売所とともに、その主要な力の源泉となったのが、都市―農山村交流を目指して、閉鎖された学校校舎などを利用して設置された交流拠点施設だ。その意義と課題を追う。

乳児持つお母さん焦点
「遊びと癒し」について助ける側に



なみの高原やすらぎ交流館(阿蘇市)

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阿蘇市波野の(株)神楽苑が運営する交流施設がなみの高原やすらぎ交流館。体育館・グランド・研修室・食堂・宿泊室があり、市内外の子ども会・学校・大学・企業などが研修・スポーツ合宿・文科系合宿などに利用している。年間利用者は宿泊約2,600人、日帰り約6,000人。

 同施設も被災直後は避難所として、駐車場やグランドに車中泊の車が殺到したという。もちろん直後の必要な対応はしたものの「やすらぎ館としては何ができるのか、何をするべきなのか―をスタッフ全員で議論して決めた」と望月克哉館長は話す。

 決めたのは、
(1)救援物資の引き渡しや災害ボランティアの受け入れの窓口業務はしない(専門家に任せる)
(2)災害時だが、本来目的の「子どもの遊びと癒し」を柱にし、このテーマをめぐる被災地(阿蘇市・益城町・熊本市)などのセンター的役割を果す
(3)被災地各地に子どもと子どもを持つお母さんたちの「遊びと癒し」の拠点が出来るように「出し惜しみなしで」働く
―ということだった。

 「子どもと子どもを持つお母さんたち(特に乳幼児)」に焦点を定めたことによって、例えばインターネット上では「ミルクがない」「離乳食が欲しい」「夜泣きする子どものあやしで寝られない」…というような関連する問題を抱え、対応を求める人たちからのアクセスが集中し、またそれにこたえてくれる様々な支援者も協力を申し出てくれたという。

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 心労が重なったお母さんたちが子どもをつれて同施設を訪れるようになり、そうした人々を対象にした活動も広がった。
 復旧作業のために宿泊施設を利用した九州電力の最前線の技術者たちが、子どもたちとサッカーに打ち興じて「癒されるなぁ」とつぶやいたり、そんな活動を知って訪ねて来た建築家が、多忙で動けない市役所職員や救援ボランティアに代わって、次々と家屋の震災証明を発行し、住民に感謝されたり…思わぬ波及効果もあったという。
 いよいよ「復旧から復興へ」。この局面に至って、望月さんは「交流館は、震災があってその存在意義をやっと地区・集落に認められた気がする。これからは地区外との交流だけでなく、『遊びと癒し』を軸に地区内でどんな交流がつくれるか考えていきたい」と話した。


(産直コペルvol.19掲載「特集 被災地熊本の直売所を訪ねて」より)

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