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ワールドレポート ドイツの食文化と普及するビオ食品

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 ヨーロッパ西南部に位置するドイツ。面積は35.7万㎢で、日本の94%ほど。人口は8,094万人で、首都ベルリンには300万人以上が暮らす。本号では、ドイツ、ミュンヘンに暮らし始めて2年目の三木まりやさんによる食文化レポートを掲載する。


伝統的なドイツ料理



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 ドイツ料理と言えば、ソーセージやプレッツェルを連想する方が多いのではないでしょうか。ソーセージやハム、チーズはドイツの食卓には欠かせないものであり、実に種類が豊富です。ドイツは緯度が高く冷涼な気候帯に位置しており、土壌も農作には適していない土地柄であるため、元来より保存食品が多く用いられてきました。有名なドイツ料理の中にも「ザワーブラーテン」(ワインビネガー漬け牛肉の煮込み)、「アイスバイン」(塩漬けの豚すね肉の煮込み)、「ザワークラウト」(キャベツの酢漬け)など酢漬けや塩漬けの保存食品が見られます。
 更に食卓に欠かせないものとして、ジャガイモ料理が挙げられます。どのスーパーにも数種類が常備され、茹でる・焼く・潰して団子状にするなど様々な調理方法で付け合わせとして食卓に登場します。また主食であるパンの種類は世界一、大型のパンだけで約300種類(!)あると言われています。砂地でもよく育つ粗引きのライ麦を使った「ロッゲンブロート」(黒パン)は、皮が香ばしく酸味のある独特な味わいが特徴です。
 また夕食は簡単に冷たいもの(温かいものを食べると眠れなくなるという理由)で済ませる人が多いなど、日本とは食習慣の違いも度々みられます。食事へのこだわりが少なく、盛り付けは飾り気がなくボリュームたっぷりであるという印象も受けます。
 他方で、動物愛護精神の根付いているドイツでは、道徳的理由や環境保護の観点からベジタリアンやベーガン(完全菜食主義)の方々も多く見受けられます。


オーガニック食品〝BIO〟



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 さて、そんな伝統的な食文化の傍ら、現代のドイツの食文化に大ブームを引き起こしている「BIO(ビオ)」、有機農産物・有機加工食品を意味するいわゆるオーガニック食品について紹介します。現在街にはいたるところにビオ専門店が点在しており、普通のスーパーにも高い確率でビオコーナーが併設されています。ビオ製品は一般の商品に比べ10~15%、物によってはそれ以上に割高となりますが、一般家庭に広く普及しています。ビオ製品は食品のみでなく化粧品や日用雑貨もありますが、今回は食品に絞ってお伝えしたいと思います。
 ドイツにおけるビオの基準は、化学合成肥料を使用していない、遺伝子組み換え技術を使用していない、家畜を適切な環境で飼育している、家畜の肥料にも抗生物質を含まない有機のものを使用している、などの厳しい規格を満たしていることです。これらの基準をクリアした製品にはビオ認証(Bio-Siegel)マークが与えられます。このビオ製品の目印となるマークは当時のキューナスト農業相により2001年に導入されました。同年ドイツで狂牛病(BSE)が確認され食品安全性への意識も高まり、以後ビオ製品の売り上げは年々上昇し続けています。ヨーロッパ域内でもドイツはビオ製品最大の市場となっており、売上額は年間70億ユーロ以上、食品においてはドイツ国内の食品売上の3・7%をビオ製品が占めています。
 ただ、このように拡大し続けるドイツのビオ市場に対し、国内のビオ農家数は伸び悩んでいます。専門店だけでなく格安スーパーにもビオ食品が並ぶようになった今、価格競争を避けることはできません。EU拡大に伴い、ビオ農家の生命線ともいわれるEU共通農業政策(CAP)による補助金が東欧諸国へ割り当てられたことで、ドイツは大きな減額に見舞われました。人件費の安い東欧でビオ農産物が生産されるようになり、安価な輸入ビオ食品に市場を奪われつつあります。消費者としてはビオの原点の一つである食品の地産地消について再考し、多少高価でも国内の農産物を積極的に入手したいものです。


安全性だけでないビオ食品の魅力



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 日本でオーガニック食品といえば「健康を考え有害物質の摂取を避けるため」という〝食の安全性〟が購入理由として第一に挙げられると思われます。それに加えドイツでは、「家畜が正当な扱いを受けているため」、つまり〝動物愛護〟という倫理的観点から消費者が購入にいたる場合が多いそうです。これは動物愛護運動が非常に盛んなドイツにおいて大変重要な意味を持ちます。もちろんエコ大国と言われ自然を愛するドイツ人ならではの〝環境保護〟意識の高さも一因であると思われます。この3点への関心の高さが、ドイツでここまでビオが浸透した要因といえるでしょう。
 では実際、ビオ食品はどうなのか? 例えば野菜では、通常のものに比べ大きさは小さく、形もいびつなものが多い印象です。しかし季節の野菜は豊富であり旬を感じることができます。また、ドイツでは一般的に卵は洗浄・殺菌せず売られておりサルモネラ菌の繁殖が心配であるため、より新鮮なものが手に入りやすいビオの卵を購入している日本人は多いでしょう。これに加え、加工品ひとつをとっても原材料表示における添加物の種類が極端に少なく、妊婦や子供のいる家庭では特にビオ食品への関心は高いのではと思われます。健康食品として人気がある豆腐や緑茶などの日本食品もビオでは品揃えが豊富であるため、私含め日本人もビオの恩恵を受けて生活しています。
 現在ドイツには30,000人以上の日本人が暮らしています。ドイツでの食生活は、日本人にとって味付けや見た目、ボリュームなど馴染み難いものが多いですが、ビオ食品のように様々な地球規模の問題について考えさせられる良い文化もあると感じています。便利なものが溢れている現代社会だからこそ、自身の身体にも地球環境にもそして他の生き物にとっても〝良い〟ものを選んでいきたいですね。

寄稿/三木まりやさん
1989年長野県伊那市生まれ。長野県立伊那北高校卒業。大学卒業後、理学療法士として病院勤務。結婚後、夫の転勤にてドイツ・ミュンヘンにて暮らす。現在在住2年目。

(平成28.7.7 産直コペルvol.17より)
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