全国の地域おこしの先進事例が満載 ―産直コペルより―

全国直売所訪問記 道の駅どうし

山梨県と神奈川県との県境に位置する道志村は、北を道志山塊、南を丹沢山塊に囲まれた、自然豊かな地域だ。村の中央には、日本有数の清流である道志川が流れる。
 村内を走る国道413号線は〝道志みち〟と呼ばれ、大小様々なキャンプ場が多数存在することでも知られる。都心からのアクセスも良いため、その豊かな自然環境を求め、年間多くの観光客が訪れる。
 道の駅どうしは、そんな道志村における観光拠点として1999年、道志みち沿いに誕生した道の駅だ。施設を運営する、(株)どうし、総支配人の佐藤久さんにお話を聞いた。


クレソンの村



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 道の駅どうしの目玉はなんと言っても「クレソン」。生鮮品はもちろん、クレソンを使った加工品も直売所の人気商品であり、併設のレストランにも、クレソンを練り込んだクレソンうどんやつけ麺など、オリジナルメニューが並ぶ。佐藤さんも「クレソン推しです」とはっきり言い切った。
 と言うのも、道志村では昭和50年代からクレソンを栽培し始めた歴史があり、生産量、出荷量共に日本一を誇る、村一番の特産品なのだ。
 クレソン栽培には、「常にきれいな水が流れている状態がいい」とのこと。村を囲む山々から流れ下る澄んだ沢水が豊富にあるこの地域は、クレソンの栽培に適した環境なのだ。
 当初は、稲作の休耕田を利用して始まったクレソン栽培。聞けば現在、直売所には「通年クレソンが並ぶ」とのこと。冬の間は降雪もあるこの地域でクレソンが育つのか?尋ねてみると、なんと需要に応えて、村外の暖かい場所にわざわざ水田を借りてクレソンを育てる農家もいるのだとか。需要の高さに驚いた。





農家の個性を楽しめる漬物ラインナップ



 直売所のもう1つの人気商品に「漬物」があると言う。「農家さん1人1人、それぞれの家の漬け方で作るので、微妙に味が違うんです」と佐藤さん。「お客さんからのいろんな意見を受けて、農家さんがそれぞれ工夫して、改良もしています」とのこと。
 試食も設けて、消費者が自分好みの味を買っていけるような配慮がされていた。また、保存料は一切使わず、賞味期限はどれも、生産日の翌日(!)に設定しているこだわりの品だ。リピーターも多いとのこと。
 冬に農産物の出荷が減る直売所において、バラエティ豊かなこの漬物は、貴重な存在となっている。





イベント開催で集客を狙う



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 道の駅で力を入れていることの1つに、毎週末のように開催している、テント販売イベントがある。
 外に張ったテントで、村の養豚場の豚肉を使った豚汁や豚串、道志川下流の養魚場の鮎ややまめの塩焼き、村のジャガイモを使ったコロッケなど、季節に合わせて販売している。「ツーリングに訪れたライダーの方なんかが、ふらっと寄っていってくれますよ」とその様子を教えてくれた。テントから漂ってくる美味しそうな匂いが多くのお客さんを引き寄せるのだろう、テント販売は重要な集客手段の1つだそうだ。
 またこれ以外にも、月ごとにテーマを変えて開催するイベントもあり、クラフトフェアやいも煮会、餅つき大会にほうとう祭りなど、その内容も充実している。ここを目的地として訪れるお客さんも多そうだ。




出荷者へ学びの機会を作ってレベルアップ



 ここで働いて14年が経つという佐藤さんに、「苦労したことはどんなことですか?」と聞いてみた。すると、「ここができた当初は農家さんもまだ販売に関しては素人なので、食品表示のことや、加工をする際の衛生管理などについては、理解してもらうまでに時間がかかりました」との答え。
 正しい食品表示や、食品加工をする際の帽子・マスク・手袋装着の徹底など、勉強会を開いて一生懸命農家に働きかけたという。
 「もしも万が一問題が起こった場合、一番厳しい立場に立たされるのは道の駅ではなく作り手になってしまう。それは避けなければと思いました」
 そんな佐藤さんらの努力の甲斐あって、「今では出荷者のレベルはとても高いですよ」と誇らしげに教えてくれた。
 「何かあっても出荷者の責任」と突き放すのではなく、農家の立場に寄り添って勉強会を開いてきた結果が、今の直売所に現れている。





高齢化と対策



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 そんな道の駅どうしの現在の課題は、「農家の高齢化」。どこの直売所でも多くの運営者が頭を悩ませる課題ではあるが、同店においてもやはり同じ壁にぶつかっているという。組合員は、道の駅開設当初からの農家がほとんどのため、「担い手を育てていくことが最重要課題」だと話す。

 「農家の高齢化は、道の駅だけでなく、村をあげての課題でもある」と佐藤さん。これを打開するために、神奈川県横浜市にある、松原商店街(神奈川県のアメ横と呼ばれる)に、移住相談室を併設した村のアンテナショップ「水カフェどうし」を今年9月にオープンしたと言う。
 横浜市で明治30年に道志川から取水を始めたことがつながりとなり、村と横浜市ではこれまでにも様々な交流が図られてきたという経緯があるそうだ。村内のキャンプ場や民宿では、横浜市民向けの優待サービスなども実施しているとのこと。
 水カフェどうしでは、村の特産品販売のほか、村の文化や観光情報を紹介したり、空き家情報を発信したりするなど、道志村のPRに力を入れている。「村に興味を持ってもらって1組でも2組でもここへ移り住んでもらいたい」と、前を向いて語った。



(産直コペルvol.21掲載 「全国直売所訪問記 山梨編」より)


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