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道の駅 お茶の京都みなみやましろ村

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 京都市街地から車で1時間30分、南山城村は、お茶畑が広がる農村地帯だ。京都府唯一の村であり、静岡茶、狭山茶と並び、日本三大茶として名高い「宇治茶」の産地である。この古くからのお茶の産地で、2017年4月15日、新しい道の駅が誕生した。
 道の駅お茶の京都みなみやましろ村は、村所有の建物に指定管理者として、株式会社南山城が入っている。その社長、森本健次さんは、実は2016年3月まで、村の職員としてむらづくりのために奔走していた人だ。
 「この村は、もともとお茶を軸に〝作る〟ことに特化してきた村。販路について考えることは少なかった村です」
 その村で道の駅の構想が立ち上がったのはなぜなのか―。もともと森本さんは、村職員時代に、既存のお茶ではなく、新しいお茶の展開として生産者と立ち上げた「南山城紅茶プロジェクト」に関わり、紅茶の製造やそのPRなど、様々な取り組みを仕掛けてきた経験があった。そうした時、「地域のものを扱う商社のような存在が必要なのでは」と、道の駅の機能に着目した。それが5年前のこと。
 そんな時に出会ったのが、高知県にある道の駅四万十とおわを運営する四万十ドラマ社長、畦地履正さん。四万十とおわといえば、デザイナー梅原真さんと仕掛けた「四万十しんぶんバッグ」等、「地域」を全面に出した独自の店舗・パッケージデザインで、各地から注目を集める道の駅だ。
 「四万十とおわに職員4人で視察に行ったんです。畦地さんら関係者の方々との懇親会の席でまず言われたのが『お前らとは立ち位置が違う。行政だけで何ができる。生産者を連れて来い』でした。『運営は誰がやるのか』という話になり『お前が腹を括れ。本気でやるなら四万十とおわのノウハウを教えてやる』と」
 もともと、村の新たな方向性を探っていた森本さん。山奥の中山間地で、独自の視点で地域振興を進めてきた畦地さんを慕うのもうなずける。視察を終え、次の日、村長に視察の報告をした際、「畦地さんに背中を押されたこともあって、腹を括りました。村役場を辞めて『自分がやります』と村長に言ったんです」。森本さんはその時の決意をそう振り返る。
 それからは、「この道の駅を自分ならどうするか」と、主体的に運営について考えるようになったのだそうだ。


四万十とおわのノウハウを活かして



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 こうして、畦地さんに京都まで通ってもらったり、道の駅四万十とおわの現場に立たせてもらったりしながらノウハウを見聞きし、準備を進めた。しかし、小さな村での道の駅運営。否定的な意見ももちろんあったという。しかし、そうした意見も聞きながらワークショップを重ねたそうだ。畦地さんたちには、チームで来てもらい、一緒に考え方の整理を行いながら、この道の駅がどうありたいか、大事にすることは何かを繰り返し考えてきたという。そうした中で浮かび上がってきたのが〝村〟というキーワードだった。
 「『村』のコミュニティーや暮らしを見つめ直す。先人がやってきたことへの敬意や誇りを道の駅で表したかったんです」と森本さん。
 だからこそ、主要なロゴデザインには、「村」を全面に押し出したデザインが採用された。
 「(お茶のオリジナルパッケージを指さしながら)この『村』という字は、村内のある農家さんが、昔、村のお茶を小売りする袋に使っていた文字なんです。この『茶』の文字もそう。お茶が支えてきた村で、先人たちが大事にしてきたものをデザインで表したんです」と森本さん。
 このデザインは、もともと森本さんの知り合いのUターンで村に戻ってきたデザイナー、兜岩知也さんが手掛けたそうだ。そのコーディネートを担ったのが、道の駅四万十とおわでもデザインを提供している「地」デザイナー迫田司さん。四万十とおわを作るチームと協力し合いながら、全体のコンセプトを形作っていった。



村で生きて 村で死んでいく



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 「自分も含めて、今この村で暮らしている多くの人は、きっとこの村で生きて死んでいくんです。その人たちが暮らし続けられる仕組みをどう作るかが道の駅に課せられた課題だと思っています」
 店内には、長年家族の食卓を支えてきたおばあちゃんの写真や、職人気質そうな農家の写真、手造りこんにゃくを作ってきた加工団体のお母さんたちの写真など、村で生きる様々な人の写真が掲げられていた。
 村の価値を押し出すため、直売所「のもん市場」では、野菜の仕入れはせず、村と周辺の生産者から出荷された野菜を置く。食堂「つちのうぶ」では、村の農産物を使った「村の食文化」を大事にした食事を提供、「村茶屋」では「茶処の余裕」と銘打って、村産抹茶を使った濃厚な抹茶ソフトクリームが食べられる。惣菜や菓子の加工所もあり、抹茶や焙じ茶を練り込んだぼたもちやパウンドケーキなども自社で開発。オリジナルパッケージの抹茶やお茶の販売も行い、村の価値を全面に押し出した商品構成で来た人を出迎えている。
 「生産者はお茶が売れるなんて思ってなかったみたいで、びっくりしています。周りからも『お茶なんて売れるか』って言われてましたから」と森本さん。
 オープンから約1カ月。ゴールデンウイークには長蛇の列ができ「村の人口を超えた日が5日もあった」のだとか。今でも平日で平均1000人を超える人が訪れているそうだ。京都府唯一の村に、新しい風が吹いている。



(産直コペルvol.24 「直売所訪問記 京都編」より)


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