全国の地域おこしの先進事例が満載 ―産直コペルより―

直売所訪問記 あ・ら・伊達な 道の駅

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 あ・ら・伊達な道の駅は、宮城県大崎市岩出山にある東北でも有数の賑わいを見せる道の駅だ。仙台市から車で1時間強の田園地帯に建つ。徒歩3分の所にJR陸羽東線池月駅もある。年間3億8000万円を売る農産物直売所を中心に、地域の物産土産品販売コーナー、バイキングレストラン、ラーメンやおにぎりのフードコート、チョコレートのROYCE’(ロイズ)の販売コーナーなどが併設され、屋外にも様々な屋台店舗が軒を連ねる複合施設だ。道の駅全体の売上げは約17億円。
 農家として、また当時の旧岩出山町の町議会議員として立ち上げ時から関わり、現在、この道の駅を運営する第3セクター(株)池月道の駅の代表取締役を務める遠藤悟さんに聞いた。

農業・食品製造業など地域産業の拠点として



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 「あ・ら・伊達な道の駅は、複合施設でいろいろな特徴=顔を持っていますが、それらがバランスよく相乗効果で支え合っている―それが最大の特徴だと思います」。遠藤さんはこう切り出した。
 近年行った聞き取り調査によれば、立ち寄り客の来店目的は、(1)新鮮な農産物、(2)ROYCE’のチョコレート、(3)地元の物産土産品、(4)美味しい飲食物―だったという。
 このうち(1)の農産物については鮮度の良いことが評判で、シーズンには地元農産物が相当量出荷され売れるという。
 (2)のROYCE’のチョコレートは全国有数のブランド品で、ROYCE’を運営する(株)ロイズコンフェクトの主力工場がある北海道当別町が旧岩出山町の姉妹都市であった縁で、「恒常的な集客力の高さ」を求めて、開設時から同販売コーナーが設置されているそうだ。それだけで約4億円を売り上げるという集客力は絶大で、特に農産物が品薄になる冬場には大きな力を発揮しているという。
 (3)の物産土産品販売は、この地の主要産業の一つである食品加工業に格好の販売拠点を提供し、食品加工業の活性化をもたらしている。これはさらに、直近の観光地=鳴子温泉との相乗効果で支え合っているという。
 そして最後の(4)美味しい飲食物。南東北での元祖的位置にある農家バイキングレストランは今も人気店であるし、屋外の屋台街も、シーズンには一大屋外フードコートと化すほど、南東北一円から人を集めるという。

最初から「失敗するからやめろ」と言われた



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 今でこそ大きな売上げを誇るが、平成13年のオープン前、平成5年頃から中学校の跡地利用の形として直売所やレストランなどを併設する道の駅計画が持ち上がった当時は、「『失敗するからやめろ』と言われ続けた」そうだ。
 しかし、当時は、稲作地帯だった当地で米作農業の衰退傾向が強まっていた頃で、水田から野菜のハウス栽培への切り替えが進んでいた。「この野菜をどこで売るのか?地元で売る場所を作らないと農家の手取りは絶対に上がらない」と考えた。また、鳴子温泉にも陰りが見え始めており、ここへの入込客を対象に土産品を製造する食品加工業を活性化するためにも売り場が絶対に必要だった。
 かくして、野菜栽培や土産品の食品加工業の維持・発展のために、出口としての売り場作り=販売拠点作りに着手したのだそうだ。当然、客にも多く足を運んでもらわなければいけない。この道の駅を目指して来てくれる客を増やさないといけない。そこで姉妹都市関係を利用してROYCE’のチョコレートを活用し、また、屋台街を目玉に押し出した屋外フードコートを開設するなどして、計画的に集客力の引き上げも狙った。
 このようにして着実に歩みを進めてきた結果、当初60人だった出荷会員も現在では230人に広がり、その中には年間で2800万円もの売上げを示す農家が育ってきた。直売農業の可能性を感じて「孫が跡を継ぐ農家」も増えてきた。「特に、当地は、中小規模の農家が多く、少量多品目生産で農業収益を上げていく新しい農業の形を定着させるために、この道の駅・直売所は大きな役割を果たしていたと思います」と、遠藤さんは胸を張る。

あ・ら・伊達な道の駅、第二ステージへ



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 農業だけではない。食品加工業も、現状で地元150社もが商品を納入している。道の駅に57人、テナントに22〜23人、都合80人ほどの雇用を作り出していることの意義も大きい。これらを踏まえて遠藤さんは、さらに、第二ステージに歩を進めるべきだと考えている。
 その一つが、ドライバーや観光客の立ち寄り場としてだけでなく、地域の活力を生むための拠点として、広い意味での「福祉」にまでフィールドを広げることだ。その手始めとしてJA岩出山と連携して、買い物難民対策の移動販売事業への協力を始めた。JAが動かす移動販売車(金融用のATMも設置されているという)に乗せて配布する弁当・惣菜を道の駅が作るという。
 もう一つの柱が、集客力をさらに引き上げるための多彩なイベント開催。地元の団体と協力して(1)熱気球の係留飛行や遊覧飛行、(2)伊達家の鎧兜の試着体験―等に着手している。
 「同じことを繰り返すのではなく、絶えず進化・変化を!これがお客さんにドキドキ感を与え、また来てくれるリピーターを増やすのだと思う」。あ・ら・伊達な道の駅の挑戦は、まだまだ続きそうだ。


(産直コペルvol.28より)
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