全国の地域おこしの先進事例が満載 ―産直コペルより―

防災拠点としての道の駅

 現在全国に1100箇所以上ある道の駅。
 災害時には施設を避難所として活用したり、炊き出しの実施や情報発信の拠点となって、復旧・復興を助けたという例も数多い。近年、そうした「防災拠点」としての役割に注目が集まる中、防災機能を備えた道の駅は、全国に増えつつある。
 昨年山梨県都留市にオープンした「道の駅つる」も、非常用の備蓄倉庫や発電機などを備え、防災拠点としての役割を有した道の駅だ。
 実は、同道の駅で支配人を務める妹尾薫さんは、九州北部豪雨で被害を受けた福岡県朝倉市の「三連水車の里あさくら」で働き、道の駅・直売所の運営方法を学んだ経験を持つ。今回も被災直後に朝倉の復旧支援に駆け付け、防災拠点の必要性を一層肌身に感じたようだ。
 このページでは、道の駅つるの防災機能を紹介すると共に、支配人であり、防災士の資格も持つ妹尾薫さんに、道の駅の防災拠点化への考えを聞いた。


防災倉庫



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 道の駅の裏手に配置された防災倉庫の中を見せていただくと、中には大きな鍋やランタン、発電機、ガソリン、アルファ米、非常用トイレ袋など、さまざまな防災グッズが並んでいた。
 大鍋を指さしながら、「この鍋は、非常時に炊き出しをする際に使えます」と教えてくれた妹尾さん。しかし非常時に限らず、イベント時などにも、この大鍋を利用して振る舞い料理などを行っているという。
 それは、「備えがあっても、いざという時に使い方や収納場所がわからないと困る」という考えから。「普段から従業員と共に練習しています」と語る。
 確かに、一度も使ったことがないようなものを、非常時に使いこなすのは難しいだろう。日頃から使い慣れていればこそ、非常時でもスムーズな対応ができる。
 なお道の駅に出荷された農産物は、非常時には炊き出しなどに利用する旨、事前に出荷者から了承をもらっているそうだ。


自販機



 続いて見せてもらったのは、自動販売機。複数ある自販機のうちの1つ、伊藤園の自動販売機は、災害が発生した際には、お金を入れなくても商品を取り出せる機能を持った「災害対応自動販売機」だ。


  

かまどベンチ



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 外の芝生広場には、「かまどベンチ」が。一見すると何の変哲もないベンチだが、ベンチの上の留め具を外すと、上下に切り離すことができる。ベンチの足部分の下で薪を燃やし、その上に鍋などを置ける仕様になっている。


  

トイレ機能つきベンチ



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 こちらのベンチは、簡易トイレの機能を備えたもの。上の留め具を外すと、非常用のトイレが中に備わっており、周りにテントを張ればそのまま使用できる。
  

広場中央



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 さらに、広場の真ん中には写真のような設備があり、薪を燃やせる仕様になっている。「ここは寒い地区なので、災害時『暖をとる』というのはとても重要になってきます」と妹尾さん。
 この設備も、イベント時などに、職員や地域の人らと一緒に火を焚いて普段から活用し、「できる限り練習しています」と話す。
 普通に生活しているのでは火を使う機会も少ないが、地域と一緒になってそうした機会を積極的に創出することで、災害時の対応力を高めている。どんど焼き(火を燃やし正月飾りなどを燃やす地域行事)や、イベントで振る舞い料理などをする際にこの設備を活用し薪から火を起こしているそうだ。
 ちなみにそれらに使う薪は、地元の山々の間伐材を使用しており、道の駅に常備してもいる。
 「山に囲まれた地域なので、薪は出荷者の方らに頼めばいくらでも手に入ります。立地特性に合わせた装備ですね」


  

ハードとソフトの両方が大切



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 大阪府出身の妹尾さんは、高校生の頃に阪神淡路大震災を経験している。そうした経験から「非常事態は誰の身にもいつでも起こりうる」と強く思い知らされたという。
 災害時の救護活動のノウハウや、心構え、対処策などを学び、日本防災士機構が認定する「防災士」の資格も取得。道の駅開設の際には、それらの知見を活かして防災拠点化のためのアドバイスをするなど、設計時から関わってきたという。
 そんな彼が、道の駅の防災拠点化について思うのは「ハードとソフトの両方が大切」ということ。
 「ハード面=設備だけ整っていても、ソフト面=使う人の能力が劣っていたら、その機能は生きないですよね。それを生かすためには、非常事態に備えて準備・練習することが大事。人は想定外のことが起こった時には、対応できないので、普段から準備して、想定の範囲をどれだけ広げられるかが大切だと思います」と真剣な眼差しで語った。
 
 防災機能を備えた道の駅はこれからますます増えていくと予想されるが、設備を充実させるだけでなく、施設を取り巻く人々が、それらの活用を念頭に置き、日頃から準備しておくことが重要なのだと教えられた。


(産直コペルvol.27 特集「九州北部豪雨」より)

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