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「エコフィード」が作る循環型社会

 (株)日本フードエコロジーセンターは、「エコフィード(※)」の製造・販売を先進的に行ってきた会社だ。エコフィードは、食品ロスというマイナスイメージを持つ存在に新しい価値を見出す取り組みとして、また飼料自給率向上の一手としても期待されている。その概要を同社社長の高橋巧一さんに聞いた。

(※エコフィードとは、〝エコ〟(eco)と〝飼料〟を意味する〝フィード〟(feed)を併せた造語。食品の売れ残り、調理残さ、農場残さなどを利用して製造された家畜用飼料。)

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「エコフィード」の作り方



 日本フードエコロジーセンターには、スーパー、食品工場、企業の食堂など、さまざまな場所から1日に約39トンもの「まだ食べられた」食材が保冷車に載って運び込まれる。それを、すぐさま300坪程ある工場内で、選別、粉砕、熱による殺菌処理を施し、特別な乳酸菌を使って発酵させる。そして出来上がった飼料は、運搬用タンクローリーに詰め込まれ、契約養豚農家のもとへ運ばれる。これが、エコフィードの製造から販売までの一連の流れだ。
 現在、小田急グループ、セブン&アイなど180社以上の食品関連事業者と契約し、365日体制で処理と製造・販売を繰り返している。契約養豚農家は関東近県から長野、宮城までを含めた14戸(2017年11月には直営の養豚農場も設立予定)。この14戸で同社が作るエコフィードはほぼ全て消費されている。

 

企業側のメリット



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 現在、全国の焼却炉で燃やされているものの約半分が食品廃棄物だといわれている。自治体によって違いはあるものの、1トン焼却するための費用は約4~5万円。その半分程を税金で補てんしている。膨大な食品廃棄物は、事業者にとっても大きな負担だ。
 しかし、同社における処理費用は、自治体によって差はあるものの、事業者が負担しなければならないゴミ焼却費用の約半分ほどで済むケースが多い。2001年に施行された「食品リサイクル法」では、食品関連事業者に再生利用等実施率が設定され、事業者ごとに基準実施率(年度目標)が定められてもいる。事業者にとっても、ゴミとして廃棄していたものが比較的安価な処理費で飼料として生まれ変わるメリットは大きい。

 

エコフィードの特徴



 養豚農家にとってもメリットがある。同社のエコフィードはリキッド(粥)状。ヨーロッパなどではごく一般的な形状で、製造段階でのエネルギーコストが低い。そのため、設備投資は必要なものの、穀物等を原料にした一般配合飼料費に対し、約半分程の費用で利用することができる。さらに、乳酸菌の働きにより、免疫力の向上などの機能も期待できる。疾病率が低下するため、抗生物質などの投与も軽減され、安全で健康的な豚に育つそうだ。
 実際、同社のエコフィードを使った豚肉は、小田急などの大手食品スーパーなどでブランド肉として販売されている。脂身のオレイン酸が増加し、緻密でうま味のあるおいしい豚肉ができるのだという。



エコフィードへのこだわりと農家との関係



 同社のエコフィードに使われている食材は、基本的にまだ食べられるものや、作業残さのみ。「食べ残し」、「腐ったもの」は入れない。食品事業者とは常に連絡を取り合いながら、養豚飼料としてリサイクルできない卵の殻や骨、ビニール類などを入れないよう、分別を徹底してもらう努力を重ねている。
 もともと、同社は小田急グループ内の一事業が前身。さまざまな事業を抱える小田急グループは、多種多様な食品ロスが出る。その有効利用のため2005年に現工場を立ち上げたのだという。小田急がエコフィードに注目したのには、いくつか理由がある。当時、食品ロスの使い道といえば堆肥化が主流だった。しかし、堆肥は毎日消費されるものではない。反面、家畜のエサであれば毎日消費されるため、膨大な食品ロス削減のためにはエサ化の方が有益だ。また、付加価値の付いた豚肉は差別化がしやすいため、小田急デパートなどを持つ小田急グループであれば販売のコーディネートも可能だ。「農家が生き残れなければこの事業は継続できません。お互いにとってメリットとなるような仕組みがあることが大切だと考えています」と高橋さん。だからこそ、設備投資がしにくいという中小の養豚農家に対しては資金援助を行うなど、サポートも惜しみない。



食品処理マーケット拡大の中で



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 日本の飼料自給率は25%(2007年度)に留まっている。この自給率を向上させるべく国をあげて取り組みが進められており、エコフィードはその糸口として期待されている。自治体などからの視察も相次いでいるそうだ。しかし「ゴミ処理費や消費地の規模も違う地域でこの仕組みをそのまま移植してもうまくいきません。地域ごとの仕組みを構築する必要があります」。食品リサイクル事業者の数が増加し、エコフィードに注目が集まる中、そう警鐘も鳴らす。
 また、「地方ならではの課題もあり、リサイクル自体遅れているケースは多い」と高橋さんは言う。例えば、豊作時に発生する余剰作物。農場残さと呼ばれ、現在は畑にすきこむ以外あまり活用方法が見出されていない。コスト等の問題もあり、その地域で独自の仕組みを作らない限り活用は難しい。「食品ロス」も地域の実情と照らし合わせながら考えることが重要だ。
 「地域に合った仕組みづくりをもっとサポートしていきたい。それが日本社会のためになると思っています」と高橋さんは今後の目標を教えてくれた。持続可能な循環型社会に向け、確かな歩みを続けている。


(産直コペルvol.26 「特集 食品ロス」より)


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