全国の地域おこしの先進事例が満載 ―産直コペルより―

目から鱗の魚の話 Vol.3

南房総で進む漁業と共にある地域づくり



 千葉県房総半島の最南端に位置する南房総市は、平成18年3月に7町村で合併し誕生しました。面積は230.22k平方メートル、人口41,707人(平成25年12月1日現在)、首都東京から100キロメートル圏に位置し、 北側には県下最高峰の愛宕山をはじめとした山々が連なり、西側には東京湾、東側及び南側には太平洋と3方を海に囲まれています。海洋性気候により、夏は涼しく冬は暖かいという、一年中過ごしやすいのが大きな魅力です。また、黒潮(暖流)がもたらす豊かな漁場となっています。

 首都圏に位置する観光地として年間約500万人の観光客が訪れ、四季折々の風景の移り変わりとともに、旬の農産物や水産物が味わえる食のまちでもあり、日本で唯一料理の祖神を祭る高家神社には、料理関係者をはじめ全国から大勢の人が足を運びます。

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 温暖な気候を利用した露地花卉栽培も重要な産業であり、1月になれば春の花が咲き始める花畑は「花の南房総」として観光スポットになります。5月には海女(海士)による潜水漁が解禁され、漁港の各所で見ることの出来る海女さんの姿は、初夏の訪れとともに夏の風物詩となっています。また、日本の酪農発祥の地でもあり、江戸時代から栽培されている房州枇杷や、春の訪れを感じさせる食用菜花、秋を彩る房州みかんなども産地を代表する名産品です。


豊かな資源 最大限活用するためには



 このように、地域資源が豊富に存在し、立地条件・気象条件にも恵まれた南房総市の産業は、農林水産業と観光業が主体で、市内の全就業者の約25%が第一次産業に従事しています。しかしながら、地域産業の担い手の高齢化、特に若年層の人口流出に歯止めがきかない状況で、第一次産業の活力は弱まりつつあります。

 今ある資源を最大限に活用する為に、地元の安心安全な農水産物の美味しさのPRやグルメ企画の実施、新たなレシピや加工品の開発、体験観光プランの提案など、地域ぐるみで試行錯誤を重ねています。
 岐阜県高山市と並び、日本一道の駅が多い南房総市では、市内に8箇所ある道の駅で新鮮な魚介類や、旬の農産物の販売、郷土料理を楽しむことが出来ます。
 
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 また、伝統的な海女漁を中心として漁獲される房州産の黒あわびは、奈良時代の木簡にもその名が残され、築地市場でも適度な歯ごたえと磯の香りが広がる滋味豊かな味わいは日本一と称されています。あわびに並び千葉県が全国でもトップクラスの漁獲高を誇ることでも有名な伊勢海老は、他地域よりも早い8月に漁が解禁され、9月から10月にかけて最盛期を迎えます。市内の宿泊施設や飲食店では、地元で獲れる伊勢海老を「房州海老」と命名し、黒潮の流れで鍛えられ、プリプリと引き締った旨みの濃い房州海老を大勢の人に知って貰おうと、工夫を凝らしたプランを提案しています。


漁協で進む 食と観光の取り組み



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 漁協でも各地域の特色を活かした取り組みを行っており、富浦町漁業協同組合直営のお食事処「浜の台所おさかな倶楽部」では、その日の朝に水揚げされたばかりの新鮮な魚介類を、地元漁師の奥さん達が調理し、漁港を一望出来る景色とともに味わうことが出来ます。今は新店舗となり、広く明るい店内ですが、開店当初は漁協の会議室に大漁旗を飾り、黒板の残る室内に長机とパイプ椅子を川の字に並べただけのものでした。それでも漁協直営の強みを活かしたボリューム満点でお手ごろ価格の新鮮な漁師料理が多くの観光客を呼び込み、休日には行列をなすほどの人気店になり、平成25年4月にリニューアルオープンしました。
 
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 岩井漁協では、タコかご漁業に使用するタコカゴをマンションに見立てた「タコマンション」を始めました。マンションのオーナーは漁船に乗ってタコカゴ(部屋)を引き上げ、獲ったばかりの新鮮で活きの良い地ダコ(入居者)を塩茹でにして味わうことが出来ます。時には他の入居者がくつろいでいることも…。「茹でたてのタコは本当に絶品!」と好評でリピーターも多く、1人で何部屋ものオーナーとなっている方もいます。岩井漁協から始まったタコ壷マンションは、富浦町漁協でも体験することが出来ます。

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 観光地としての地域の魅力を高める活動を行いながら、次の世代の担い手となる子ども達が、地元の産業や食材への興味・関心を持ち、育てる苦労・収穫の喜びを味わってもらうため、ワカメの養殖から収穫までを通した体験活動や、地元農家の協力による食農体験など、食育を兼ねた幅広い活動にも力を入れています。
 恵まれた地域資源を活かし、多種多様な人が手を取り合い連携しながら、地域の自主性と創意工夫による「元気で魅力のある南房総市」を目指し、地域一体となって取り組んでいます。

文:髙橋彩子さん
南房総市農林水産部地域資源再生課 主事平成22年4月~南房総市役所勤務
入庁から3年間保健福祉部在籍 
平成25年4月~農林水産部地域資源再生課 

〒299-2492 千葉県南房総市富浦町青木28番地
TEL 0470(33)1073

(平成26.3.12 産直コペルvol.4より)
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