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農福連携その4 長寿県から発信する介護予防の〝かたち〟

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 長野県南佐久郡川上村で今年4月、村の介護予防事業「おたっしゃクラブ」がスタートした。お年寄りは、とても経験が豊富。潜在能力を発揮できないでいる人も、少しの手助けがあれば十分自立できることから、少しでも元気になってもらう目的の行政サービス。このあと紹介する野菜づくりのほか、仲間同士で趣味や遊びを興じる中で、指先や足を動かし、同時に頭を使うことで、いつまでも元気で健康を保ってほしいと村が導入した。
 今回、数ある活動の中で農業とお年寄りの関わりを現地で取材。畑で作物を収穫する元気いっぱい、笑顔いっぱいのお年寄りたちと出会った。


介護予防に取り組む川上村



 高齢者が地域の中に生きがいや役割をもって生活できるような居場所と出番づくりなど、地域内での自立支援の取組みの推進などをまとめた、国(厚生労働省)の介護予防政策に基づいて村がその実践に取り組んでいる。村の人口に占める後期高齢化率(75歳以上)は平成26年度で29.6%。若い就農者が多いため同じ中山間地の自治体と比べて決して高い数字ではないが、介護予防の観点から早期に取組み始めた自治体の1つだ。


レタスで有名な村 高齢者のほとんどは農家



 日本一の高原レタスの産地として知られる川上村。高齢者のほとんどはかつて農業で生計を立てていた。おたっしゃクラブの活動の中で農業を取り入れているのは、お年寄りの中にある農業の潜在能力を呼び起こそうとするため。畑で汗を流すことの清々しさ、収穫の喜びを今一度生きがいに変えてもらう狙いがある。


開設から半年で効果



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 開設からわずか半年で利用者たちに変化が見え始めたと話すのは、川上村地域包括支援センターの由井千富美さん。これまでは運営側が一方的にサービスを提供してきたが、おたっしゃクラブでは、利用者が自分のやりたいことを見つけ、積極的に取組んでもらうことを事業の柱にしており、これにより〝自分から動ける〟お年寄りが増えたという。
 「初めはこちらからのアクションを待っている様子でしたが、今は自分から考えて行動できるようになり、加えて、お互いの助け合いも生まれています。認知症があった利用者さんも症状が目立たなくなりました」と導入の効果は大きいと話す。


施設に隣接する畑で野菜づくり



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 拠点となっているのは、村の保健福祉関連施設が集まる「ヘルシーパークかわかみ」。畑は施設に隣接した2カ所にあり、歩いて通える距離にある。畑まで歩いて、畑で汗を流す。この日課がお年寄りたちを元気にし、健康を保っているといえる。
 初年度の栽培品目はナスやトマト、トウモロコシ、ブロッコリー、カボチャなど約20品目にのぼる。何を栽培するか相談しながら、それほど広くない畑で作物のリレー栽培を展開している。収穫した野菜は8月にオープンしたばかりの農産物直売所「マルシェ川上」などで格安で販売。売れ行きは好調で、売上金は種や肥料の購入費・忘年会費等に充てる予定という。
 訪問した日も、顔の大きさほどもありそうな巨大ナスやよく熟れたトマトを元気よく収穫する姿があった。採れたての野菜を早速施設内に持ち込み、出荷前の袋詰め作業。ビニール袋に入れて、ラベルを貼る。この一連の作業を慣れた手つきで手際よく共同作業していた。


農業でいきいき 健康に一役



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 福祉と農業との関わりについて由井さんは、「自然の中で無理のない全身運動するので、高齢者には心身ともに良い影響があると思います」と話す。農業立村に住む利用者だからこそ成り立つ〝かたち〟なのかもしれないが、農業と福祉の関係は地域特性に合ったスタイルが各地に存在しそうだ。
 長寿県、長野県川上村のお年寄りは一層いきいきし始めている。

(平成27.11.9 産直コペルvol.14より)
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