全国の地域おこしの先進事例が満載 ―産直コペルより―
新潟で全国農水産物直売サミット開催
全国から直売所関係者集う
「全国農水産物直売サミット」が新潟県新潟市で、10月30日(水)~31日(木)に開催された。主催は全国直売ネットワークと(一財)都市農山漁村交流活性化機構(東京都)。
1日目はシンポジウム、分科会および交流会が行われ、全国各地から直売所関係者約250人が集まり活発な意見交換が行われた。2日目は、新潟県内の直売所を視察、豪雪地帯ならではの工夫や店づくりについて見学した。
地域に則した工夫随所に
本サミットの全体テーマは「日本の多彩な農林水産業と食文化は、直売所が守り育てる」。開催地である新潟県は全国屈指の米どころであると同時に豪雪地帯であり、中山間地域を多く抱える。本サミットでは、そうした地域性に即した直売事業の在り方が浮き彫りとなった。
新潟県の農業は稲作が中心、また豪雪地帯であることから園芸作物に取り組みにくい土地柄だ。そのため、比較的直売活動に関しては後発地域であったという。
講演を行ったJAえちご上越営農生活部園芸畜産課長岩崎健二さん(上越市)は、農産物直売所「旬彩交流館あるるん畑」の立ち上げから関わってきた経験を話した。同直売所は、「販売実力は1億円」といわれた中で、雪国ならでは工夫を続け、現在は5億円を超える売り上げを誇る。
講演では、特に豪雪地帯における冬場野菜の確保について注目が集まった。同直売所では、「雪下畑の仲間たち」と銘打ち、昔からの冬場野菜の保存方法である「雪下保存」をした野菜を全面に打ち出し売り場を設けている。雪下での保存に適した野菜を選定し、生産を呼びかけ数量を確保しているという。
岩崎さんは「雪下で保存された野菜は味が濃く美味しい。冬場は農産物がないと考えるより、直売所だからこそ、こうした工夫と準備をすることで、冬場に売る野菜を確保することが出来る。雪国ならではのブランド化を目指したい」とアピールした。
直売所だからできる地域との関わりを模索
続いての活動紹介では新潟県各地で活躍するリーダーたちからの事例発表が行われた。
「とれたて野菜市かみはやし(株)」(村上市)副社長川崎澄子さんは、全社員女性という特徴を活かした商品づくりや店づくりを行っているという。手造り加工品を充実させ、さらに地域の伝統食である「飯鮨」を商品化するなど、伝統の継承にも直売所が寄与している例を示した。
(株)亀田郷農産物直売所「大地」(新潟市)代表取締役杉本克己さんは、地域密着型の直売所として、敷地内に業務用のゴミ箱を設置。市民の生ゴミを回収して堆肥を作り、野菜栽培に活かすといった実証実験も進めているという。
「(株)あいポート仙田」総務部長長谷川東さんは、集落支援という形で直売所が機能している例を提示。高齢者の多い中山間地では、欲しいものを買うということよりも「コミュニティ」を求めていると話し、直売所だからこそできる「新しい山間地の仕組みづくり」が必要不可欠だと訴えた。
直売事業と地域資源の活かし方 事例を共有
次に、分科会ごとに会場を移し、(1)「地域資源を活かした商品開発の進め方」(2)「持続的な経営を目指す、直売所の適正規模」(3)「地域の食文化を伝える売り場・商品づくり」(4)「直売所を核とした集落サポート事業」(5)「地域特産を活かした料理開発・産地との連携」をテーマとし議論が進められた。
その後、新潟大学農学部清野誠喜準教授をコーディネーターに迎え、それぞれの分科会の全体報告会を行った。
それぞれの報告を受け、清野准教授は、「直売所が生き残るには、消費者をいかに巻き込み、『五感のマーケティング』を行うか。ただ販売するのではなく、それ以上の価値を消費者と共有する視点が必要だ」とまとめた。
それぞれのテーマに沿って、地域における直売事業を見つめ直し、他地域との共有を図ることで農水産物直売・加工事業が地域の中であるべき姿について、議論を深める分科会となった。
(平成25.12.15 産直コペルvol.3より)