直売所がこの先生きる道を共に探る

信州直売所学校【7】 学校給食・福祉事業と直売・加工の連携

12月6日・7日に行った第7講義のテーマは「学校給食・福祉事業と直売・加工の連携」。学校給食の分野では、長野県朝日小学校(朝日村)栄養教諭の杉木悦子さん、農福連携分野では社会福祉法人一麦会(和歌山県和歌山市)理事を務める柏木克之さんを講師に迎え、それぞれの領域について掘り下げた議論を展開した。

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6次産業への就労の可能性



社会福祉法人一麦会「麦の郷」は、障害者の就労支援事業をしており、その中でも6次産業への就労に力を入れている。これについて柏木さんは「農業や農産加工、飲食業には、それぞれの利用者の障害特性に応じた、多様な仕事がある。障害者一人一人に合った仕事を提供し、その人が活躍する場を生み出すという意味で、6次産業への就労には大きな可能性がある」と力を込めた。
 同法人では、耕作放棄地を利用した農作業や、せんべい、ジュース、ゼリーなどの農産加工、直売事業など幅広い事業を展開しており、福祉事業収益(国の税金から支払われる収益)だけに頼らず、就労支援事業収益で約3億円もの収益を生み出している。
 「法人税支払いの義務がなく、かつ助成金を申請できるという社会福祉法人の優位性を生かして、一般企業にはできない事業も可能となる。地方創生の一役を担える事業を起こすことだってできる」と熱く訴えた。

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福祉と経営、2つのマインドが求められる



 「『障害者施設』で作った、という看板は商品の売りにはならない。私たちの商品は、『高品質』が売りになるものを作ってきました」と柏木さん。
 麦の郷では、地場産の原材料を使って、完全無添加の加工品を作るなど、良質で消費者にこだわりを見せられる商品を販売している。また、農産加工所開設時には、保健所の認可をとるだけでなく、企業や生協にも売り込めるようにと、エアーシャワーや金属探査機など、徹底した衛生・品質管理設備を整備した加工所を作って商品の強みとした。
 「これからの就労支援事業は、福祉職員に事業経営の基礎を身につけてもらうことが必要」と柏木さんは強調する。麦の郷の仕事に就く前は、大手のスーパーでバイヤーとして長年キャリアを積んできたという柏木さん。その経験を商品開発や販路拡大に生かしながら、これまでも事業を展開してきた。そして職員らにもそうした「経営の専門性を身につけさせたい」と人材育成にも注力してきたという。
 「営業活動は福祉職員が最も苦手とするところでもあります。ただ、この苦労をしないと、いずれ作業所の商品は売れなくなると思っています。職員にはずいぶん嫌われもしましたが、市場への参入のためにと、経営・営業能力の向上に力を入れてきました」と話す。
 障害者一人一人が個性を持って働ける職場作りのため、市場情勢を見極めながら、様々な工夫と努力で道を切り開いてきた柏木さんの情熱に、圧倒された1時間だった。



地産地消の学校給食の大切さ



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 2人目の講師は朝日小学校で栄養教諭として働く杉木さん。朝日小学校では、給食の材料になるだけ多くの地場産食材を使おうと、地域の農家や直売所の理解と協力を得ながら地産地消の学校給食に取り組んでいる。
 「顔が見え、話ができる身近な生産者の新鮮で安全な食材をいただくことで、食べることの大切さや、自然、人、物への感謝の心が育ちます」と杉木さんは話す。
 同校では、学校給食を「生きた教材」とするために、献立に地場産物を明示すると共に、毎日発行する給食通信「ぱくぱくもりもり」の中で生産者の情報を紹介し、さらに生産者を教室に招いて交流給食も実施するなど、生産者と学校との交流を積極的に進めている。また、給食の時間だけでなく、総合的な学習の時間も活用しながら学校全体で食育に取り組んでいる。
 「1回1回の給食で子供たちの舌が育っていきます。安全でいいものを作って、子供たちの舌をきちんとしたものに育てたい」と杉木さん。そのために、地場産食材にこだわるだけでなく、余分な添加物の入っていない調味料を探して使っているという。
 彼女が30年間栄養士として働いて、行き着いた答えが、「子供たちが〝豊か〟に育つためには、地産地消の学校給食が大切だ」ということ。そのために継続して行ってきた地域の生産者との交流や、食育にかける思いをハツラツと語った。


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