直売所がこの先生きる道を共に探る

「環境にやさしい農業」モデル直売所の取組み状況

 本事業は、2月より公募を行っておりました4つの直売所を選定し実施します。それぞれの店舗の特徴を踏まえつつ、GAP、エコファーマー、環境に優しい農産物認証などの導入、あるいはそれに準じる形で農産物のブランド化を図ります。また、栽培方法、販売方法などを検討しながら、「環境に優しい農産物」に対する消費者の反応、売行き状況などの調査・報告を行います。
 そしてこれら4店舗の取組みを「環境に優しい農業」を実践する直売所のモデルケースとして位置づけます。各店舗の取組みについて、紹介します。


道の駅しなの「ふるさと天望館」
土づくりからの農業と安全な農作業で農産物のブランド化を図る



 道の駅しなの「ふるさと天望館」は、信濃町ICからすぐ、長野県の北限であり「信州北の玄関口」ともいうべき場所に位置します。
 同店は、高原気候を利用した夏野菜が豊富。本事業では、同店でブランド化を進めたい特産品でもあるトウモロコシ、トマト、ナスなどのほか、伝統野菜「ぼたごしょう」にスポットを当てます。「ぼたごしょう」は信州の伝統野菜にも認定された中辛のトウガラシです。

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 また、現在、同店では、「Dr.バシラス」という土壌活性剤の使用を推奨しています。「Dr.バシラス」とは、納豆菌の一種である「バシラス属」の中から選別した微生物を複合・ブレンドした粉末状の微生物土壌活性化剤です。それ以外でも、極力、化学肥料や農薬を使用しない農業を進め、土づくりに特化した農産物を推奨しながら、それらを信濃町のブランド農産物として確立させることを目指します。

 具体的には、現状で土づくりからの農業に積極的に取り組まれている生産者に集まって貰い、土壌検査や安全でリスクの少ない農業を行うための「生産者GAP」にも取り組みながら、エコファーマーや「環境に優しい農産物認証」の取得も目指します。

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 同店の直売所は、夏から秋にかけて期間限定で開業されます。そこへ特設棚を設け、土づくりに特化した農産物がどのように消費者へ受け入れられるのかの調査も行います。そしてそれらを積極的にPRし、その反響を調査、販売方法などの検討を行いながら、さらに多くの生産者の方に参画して貰えるよう呼び掛けを行う予定です。


たてしな自由農園
県外客を視野に信州の高品質な農産物をPR



 たてしな自由農園は、堀店、花蒔店、原村店の3店舗を運営しています。平成12年7月に堀店をオープンし、花蒔店、原村店と店舗を増やしてきました。生産者は現在340名程。また、原村店にはレストランとパン屋、アイスクリーム工房などが入った複合施設「808Kitchen & Table」が併設しており、好評です。

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 同店の特徴は、蓼科高原の別荘客や都市部からの観光客が多いことです。新鮮で高品質な農産物や加工品を求めて多くの方が訪れており、イタリア野菜などの変わり種の野菜も人気になっています。
 こうした県外からの来客者が多いという特徴を生かし、同店では信州の農産物は高品質で美味しいということをより多くの人に知ってもらうように取り組みを進めます。

 店舗には「環境に優しい農産物」の販売棚を新設し、栽培にこだわっているものを強く押し出していきます。そのために、エコファーマーや環境にやさしい農産物認証を保有する生産者の拡大を行っていきます。また、栽培履歴や防除履歴の管理を店舗側でも進め、より安心した農産物が提供できる仕組みづくりを行います。こうした取り組みのなかで「たてしな自由農園GAP」を整理し、GAP担当者の育成や生産者の意識向上を目指す予定です。

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 6月5日に行われた生産者へのモデル直売所育成事業の説明会では、生産者から「農家個人個人よりもお店が消費者から信頼される必要がある。環境に優しい農産物の売場の新設などを通して、ここの店のものは安心だ、美味しい、と思ってもらえるようにしていきたい」という意気込みが聞かれました。
 今後は、更に説明会などを開き、こうした考えを広め、生産者全体でこの事業を盛り上げていきます。


生産者直売所アルプス市場
「土乃守」を使って丁寧に栽培した低農薬野菜のブランド化



 生産者直売所アルプス市場は、平成9年にオープンした松本市の直売所で、現在では300名を超える生産者が同店に出荷しています。
 同店にはすでに、「生産者・販売者の心得」という取り決めが存在しますが、それが生産者・販売者の間で実施されているかを、自己点検するまでにはいたっていない状態でした。それを、本事業の取組みの中で、生産者を交えて、もう一度内容を検討し直し、アルプス市場直売所GAPの徹底実施を目指します。 

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 またこれらの取組みを基盤とし、従来より使用していた天然発酵肥料「土乃守」を使った「土乃守」野菜のブランド化を図ります。これらは、エコファーマー基準を超える栽培方法を実践し、またそれらの販売促進のために、「土乃守」フェアを開催したり、銀座の長野県シェアスペースなどでテストマーケティングを兼ねてPRを行う予定です。(ただし、生産者の中には、土乃守ではなく自ら工夫した独自の肥料を使用して栽培している方もいるので、そういった熱意ある人たちの取組みも同時にサポートしていきます。)

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 6月6日に生産者を集めて行なわれた説明会で、代表の犬飼浩一氏は、「決まりを作ってガチガチに締め付けるつもりはないが、消費者から求められている声に応えるためにも、最低限やっていなかければいけないことは皆で守っていこう」と生産者に呼びかけました。
 皆で点検し、学びあうことで、これまでなかなか情報が入ってこない中で農業を行なっていた農家が、互いに技術を高め合っていけるような直売所の形を目指します。


上田市丸子農産物直売加工センター「あさつゆ」
環境と人間の関係を考える



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 上田市丸子地区の直売所「あさつゆ」は、開店前に人が並ぶほどの人気店。地元農家がつくる組合が運営しています。丸子の直売事業は昭和60年頃の無人販売所から始まります。そこから様々な直売活動が取組まれましたが、現在の組合が発足し、今の「あさつゆ」の店舗での営業を開始したのは2004年。現在の出荷組合員は200名を越えます。今年、開設から10年の節目を迎えました。

 同店では「環境に優しい農業」をすることの意義を、販売促進効果の面からだけでなく、そもそも農業と人間と環境の関係はいかにあるべきかの考察を深め、出荷農家に「農業を科学する目」を養えるよう研究会・講演会などを軸に盛り上げを図ります。そのためには、今一度、「環境負荷の低い、持続可能型の直売所農業」とはなにか?それをなぜ目指すのか?―を考え、一人よがりではない客観的な評価基準に照らして、誰からも「あさつゆの生産者は良い農業を進めている」と評価していただけるように取り組みます。

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 具体的には、(1)私たちが目指すべき「環境にも人の体にもやさしい農業」とはどういうものか? (2)自分たちの農業生産や直売事業を自分たちで自己点検・自己管理するシステムづくり進める(これを「GAP」といいます)ために何が必要か? (3)現在的な消費者動向にもマッチする「安全・安心」に関わる付加価値をどのようにして生み出すか?(例えば、エコファーマーとか環境にやさしい農産物認証などの利用)―こうした点を系統的に考え、実行していくための研修会を、年間を通じて開催していきます。

(平成26.6.18 産直新聞 GAP号外より)
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GAPとは

GAPとは「Good Agricultural Practice」の略で〝良い農業の実施〟の意味。「人間の健康」「自然の環境」を守り、「持続的農業」生産を行い、消費者に信頼される健全な農業を実践することです。科学的知見に基づきながら、食品安全だけでなく、環境保全や労働安全など幅広い分野を対象とし、法令やリスクを認識しつつ、持続的な農業生産を目指します。

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