直売所がこの先生きる道を共に探る

信州直売所学校【9】 直売所経営と売上げデータ分析の方法


第9講義(1月17日・18日開催)のテーマは「直売所経営と売り上げデータ分析の方法」。講師には、愛媛県今治市から、JAおちいまばり職員でさいさいグループの代表(当時)西坂文秀さんと、長野県上田市の、丸子農産物直売加工センターあさつゆの組合長、伊藤良夫さんを迎えた。


農家の収益を上げるために働くことこそ農協のあるべき姿



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 愛媛県今治市のJAおちいまばりが運営する、複合型直売所施設「さいさいきて屋」は、全国でも有数の大型直売所だ。そしてこの店を一から立ち上げたのが、西坂さんである。
 かつて、金融事業が事業の柱となっていた農協のあり方に疑問を感じていたという西坂さん。「農協の収益のためではなく、農家の収益を上げるために働くことこそが農協のあるべき姿だ」という思いで、直売事業をスタート。
 最初の店舗は、雑木林の中、壁も何もないような小さな施設からスタートしたというが、1年目で2億円を売ったという。その成功の裏にある、農家への「マーケティング講座」についても言及。
 西坂さんは、出荷してくる農家らに対し、「安売り競争ではなく、儲けることを考えよう」と呼びかけたという。出荷会員には全員、携帯電話を持ってもらい、15分置きに売り上げデータを送って、「それを分析することが大事。なぜ売れたかを考えてみて」と促しているとのこと。わずかながら行っている仕入れの量についてもデータを提供することで、どの時期に何が足りていないのか、何を作れば売れるのか、を農家自身に考えてもらうような工夫をしている。
 西坂さんが信念と情熱をもって続けてきた店づくりの知恵と発想、努力に、夢中で耳を傾ける受講生らの姿があった。



生産者のやる気を高めるさまざまなデータの分析



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 丸子農産物加工センターあさつゆでは、組合長の伊藤さんが中心となって、売り上げデータの活用に力を入れている。実際の店舗の資料を見せながら、分析方法や考え方を詳しく解説してくれた。
 あさつゆでは、直近3年間の、農産物ごとの販売点数・販売金額が分かるデータを毎年生産者ごとに出し、本人に渡しているとのこと。「通信簿」と呼んでいるこのデータを見せることで、生産者のやる気を高めることにもつなげている。自身も生産者であるため、「自分が欲しいと思うデータを出すようにしている」と伊藤さん。
 このほかにも、店全体の客数・客単価・購買点数・商品単価の動きから、店の運営を分析したり、商品別の3年間の販売記録(金額と伸び率)を出して生産者に提供し、どの作物の栽培が狙い目なのかを生産者自身に考えてもらったりもしている。
 膨大なデータを分析するのは簡単なことではないが、生産者自身が考える店になるように、と時間をかけてデータと向き合ってきた伊藤さん。最後に受講生らに向かって「データは、店単体ではなく直売所間で比較することによって利用価値が飛躍的に増大する。直売所間でデータを交換しあえる環境を作りたい」と呼びかけた。




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