直売所がこの先生きる道を共に探る

信州直売所学校2015 第10回

タイトルなし

 産直新聞社と長野県農政部の共催で昨年7月から開催してきた「信州直売所学校」も2月10日の講座をもって幕を閉じました。最終回のこの日は、「直売所の未来のカギを握る新しい農業の形」と題し、「モノを売る」「モノを作る」以外で、交流によって直売所を活性化させることができるグリーンツーリズムにスポットを当て、産直新聞社代表の毛賀澤明宏と、都市農山漁村交流活性化機構の吉岡靖さんが講師を務めました。
 「売る」だけの直売所は将来的に立ち行かなくなる可能性があり、今後、体験農園や市民農園、食育、都市農村交流など様々な交流を通じた“つながり”からリピーターを獲得していく必要が求められています。
 現在、県内各地でグリーンツーリズムが展開されていますが、このうち比較的成功していると言われる事例について毛賀澤代表は「食育教育や都市農村交流などの政策に先導される形での取り組みが多く、農家収入などある程度の成果を果たしてきているといえるが、受け入れ農家が疲弊してしまっている例も少なくない」と問題提起。このことから、継続的な耕作者の獲得・育成や顧客の囲い込み、農業関連教育サービス業への展開などを目的とし、土を貸すだけや摘み取るだけの事業からの脱却、ITの活用、インストラクター役の育成などの方法を示しました。
 都市農山漁村交流活性化機構の吉岡靖さんは「地産地消型グリーンツーリズム」を提唱。地域の資源を活用して、その地域で楽しんでもらうことを目的としてます。


『では、誰が行うの?』



タイトルなし

 この疑問に対し、吉岡さんは「近者悦遠者来」の論語の一節を引用して「自分たち(近隣)が楽しんでいたら、遠くから人がやって来る」と語り、行政と動物園が市民を喜ばせるために改修した旭山動物園(旭川市)は、今や道外からの観光客で溢れているが、前述したようにあくまで市民向けであり、もともとは観光客をターゲットにしていなかった例を示しました。
 さらに、主な旅行の目的は5つあると吉岡さん。観光、買い物、食、宿泊、残る1つは各種体験だといいます。ただ、体験は「ほっといても来るわけない。誰かがセールスしないと。その中で直売所の役割は有効だと思う。その際に直売所の魅力を付加する要素も必要だ」と語りました。


全10回の講座を終えて



タイトルなし

 7月から2月までの8カ月間で計10回の講座を開き、延べ349人に参加していただきました。非常に勉強熱心で少しでも直売所を良くしようという熱意が毎回ひしひしと伝わってきました。ここで講義終了後に回収したアンケートから「受講を通して学んだこと・成果」について紹介します。

 「JA以外の直売所がしている活動や工夫など全く知らなかったが、ここで色々知ることができた。小さな直売所だからできることもあったり、大きな直売所の大きなチャレンジだったり、県内の直売所はとても面白いと思うことができた」(JAみなみ信州およりてファーム)

「GAP、エコファーマーは必要だ」(夢マーケット田中線)

「1月13、27日の加工食品開発はもう一度やってほしい。加工部のやる気を引き起こした」(ほりがね物産センター)

「直売所の方と知り合えた。もっと深めていきたい。現状を見直す、整理することが重要と思った」(道の駅しなの)

「直売所間交流が進むことにより発展に結びつくと考えます」(道の駅雷電くるみの里)

「売り上げ低迷で人件費・経費削減で日々の仕事で一杯一杯で悪循環になっているように思えます。その中でここは譲れない‼︎ということを作って力を入れていかねばいけないと思う」(道の駅大桑)

「地域性、地域の特性を生かしてその情報をお客さんに伝えることの大切さ」(小海町直売所)

「土づくりと直売所の運営、加工品の可能性については今まで深く触れる機会がなかったので新たに取り組むきっかけになった」(道の駅信州蔦木宿)

「貸農園を継続し体験型に変化していけたら良いと思う」(vif穂高)

「発想、アイデアも大事なことである。物の見方で売れるものができるのかと考えました」(マルシェかわかみ)

「他地域の直売所に関わる人との交友が築けた。直売所運営に関わる具体的な事例が聞けた」(いぬコロ市場)

 信州直売所学校で学んだことを今後の直売所運営に大いに活用していただけたらと思います。また、皆様にお会いできる日を楽しみにしております!
アグニコ

安心安全な農作物の生産・販売・購入を支援するwebサイトをオープンしました! 手間のかかる防除履歴のチェック作業を手助けする「農薬適用判定navi」と、使用可能な農薬をカンタンに検索できる「農薬info」をテスト運用中です。ただいまユーザー募集中! 登録のお申込み・お問合せは産直新聞社まで。

GAPとは

GAPとは「Good Agricultural Practice」の略で〝良い農業の実施〟の意味。「人間の健康」「自然の環境」を守り、「持続的農業」生産を行い、消費者に信頼される健全な農業を実践することです。科学的知見に基づきながら、食品安全だけでなく、環境保全や労働安全など幅広い分野を対象とし、法令やリスクを認識しつつ、持続的な農業生産を目指します。

記事一覧