直売所がこの先生きる道を共に探る

技術向上・品質改善で直売所の魅力をアップしよう!

特集「環境にやさしい農業」実践直売所育成事業第2弾



 長野県を舞台に「環境にやさしい農業」実践直売所育成事業がスタートしました(本紙3号で既報)。長野県農政部と当社・産直新聞社が連携・協力し、長野県内のすべての直売所に呼びかけて進めるこの取組みは、新設ラッシュの影響で競争が激化し、総体として売行きが頭打ちになっている農産物直売所の活性化を目指し、主に栽培技術面、また施設管理面で具体的な改善を進めて、人に自慢できる、魅力あふれる直売所にするための第一歩です。


約160ヵ所の直売所を一斉ヒアリング
―直面する課題を浮き彫りに!―



タイトルなし

 長野県内の直売所は、いま、どのような運営・経営状況であり、どんな課題を抱えているのでしょうか?―「環境にやさしい農業」実践直売所育成事業では、まず、このことを浮き彫りにするために、県内のすべての直売所の協力をえて、一斉ヒアリングを行います。
 4~5月にかけて、長野県内の常設有人の直売所を約160軒を対象にして、経営規模・運営状況・栽培技術向上の取組み状況・加工や農家レストランとの連携状況などについて、産直新聞社のスタッフと長野県農業改良普及センターの担当者が聞き取り調査します。

 なお今回の調査では、対象の160軒に含まれないJA系の直売所について、JA長野中央会さんが一手に引き受けて、調査に協力してくれることになっています。それも合わせると、調査対象は総計220軒ほどになる大調査です。


調査の柱は、栽培技術・運営管理
―良品を、丁寧に、作り・扱う直売所―

 

長野県内160ヵ所でヒアリング
長野県内160ヵ所でヒアリング

 ヒアリング項目は直売所の関連する多領域に及びますが、今回の主要な調査の柱は、(1)栽培技術の向上に関わることと、(2)施設の運営管理に関わること―の2つです。
 全国的に直売所の数が多くなり、売上げが頭打ちの店が多くなって来ていますが、その打開のためには、様々な角度からの取組みが必要です。

(1)栽培技術の向上、生産物の品質改善
(2)販売力強化、販路拡大と商品の磨き上げ
(3)加工の充実、加工品の豊富化
(4)運営者・販売員・農家の人材育成
(5)直売所の運営ノウハウの標準化
(6)地方自治体や他団体との連携・協力

 などの角度・領域が考えられます。
 本誌「産直コペル」に報告を連載している「POPラベルで売上げ改善!プロジェクト」は販売力強化に関わることですが、今度スタートした「環境にやさしい農業」プロジェクトでは、主に(1)の栽培技術向上と、(5)の直売所の運営(それも主に施設管理面)に焦点をあてて行きます。
 「良品を、丁寧に作り、扱う直売所になれているか?」「そのための改善点はどういうところにあるか?」という辺りに関わることです。ヒアリング調査の報告は、次号「産直コペル」や「産直新聞夏号」の予定です。


直売所GAP・生産者GAPの実践へ
―自慢できる、魅力あふれる直売所へ―



 ヒアリングで浮かび上がってくる課題については、長野県全体としても、また、直売所ごとにも、直売所、普及センター、産直新聞社などが共同して具体的な解決策を考え、実行していきましょう。
 その中で、特に栽培技術・施設運営管理については、直売所ごとに、生産者GAP基準や直売所GAP基準を検討・作成し、その基準に沿って、運営者や生産者が主体性をもって自己点検・相互点検していけるようにするのが目標です。

 GAP(ギャップ)という用語は、Good Agricultural Practice、直訳すれば良い農業実践の略。とかく、細かく厳しい規則でもあるかのように思われがちですが、農産物の栽培や、直売所の施設運営管理について、自分たちで基準と目標を作り、それをきちんと実行していくという、モノを作る・売るという仕事にとってはきわめて当たり前の心がけのようなものです。トヨタ自動車から発信され世界に広がった「改善(カイゼン)運動」の農作業・直売所版と言っても良いでしょう。

 とにかく、自分たちの農作物の栽培を、今よりも少しでも良くする、直売所の管理運営をちょっとでも丁寧でやりがいのあるもの変えていく、そのための道しるべのことであり、またそれを作り、それに沿って実行することが、生産者GAPであり、直売所GAPなのです。


6月直売所指導者研修会に参加を
―新しい挑戦をしてみよう!―



 もちろん、これまでも、多くの直売所で、運営者や生産者の皆さんが、現状を良くするための努力を重ねてきたことと思います。「直売」とか「産直」とかという名を冠しながらも、つまるところ売上げ利益のみを求めて、安易に市場仕入れに依拠したり、加工品の品揃えを土産品卸業者に委ねたりしているところはともかくとして、ほとんど多くのまじめな直売所では、栽培についても、施設の運営管理いついても、いろいろな改善が積み重ねられきたはずです。

 しかし、そうした行為が、何を目指し、どのようなことを、誰が何時するのかという定式化もされず、どうやって実行したのかの記録もないままで行われていたのでは、他の人々―特に消費者―に対して何の説得力も持ちません。胸を張って自慢しようにも、その根拠を示せないのです。これでは「安全・安心」と幾ら口で言ってみても、まるで実態のないのだといわれざるをえません。

 今回のプロジェクトでは、一斉ヒアリングで状況を掌握し、多くの直売所の皆さんと意見交換をしたことを踏まえて、6月に、長野県内10ヵ所で、直売所GAPと生産者GAPに焦点を当てた指導者研修会を開催します(表1参照)。

タイトルなし

 この研修会で、日ごろ積み重ねている改善の系統的な計画作りとその記録の方法について勉強し、それを足がかりに、直売所ごとに、自分たち自身の力でそれができるようになることを目指しましょう。


「環境にやさしい農業」実践モデル
―県内4つの直売所を選定―



 こうした直売所GAP・生産者GAPへの挑戦を大前提に、その強みを活かして、さらに一歩、農産物の差別化を図り、直売所の個性を押し出すために行うのが、直売所として、「エコファーマー」を増やし、信州「環境にやさしい農産物」の認証品を増やす取組みです。
 「エコファーマー」は、環境適合型の生産方式で丁寧な農作業をする農家に対して与えられる認定制度。一方、「環境にやさしい農産物」は、主に化学肥料と化学合成農薬の使用量を、地域の一般的な使用量から50%以上減らし手栽培された農産物に与えられる認証制度です(ともに申請が必要)。

 もちろんこれらを基にして、さらにJAS有機とか、市町村とか直売所ごとの特別認証制度にまで進んでもかまわないのですが、とにかく、環境と食べる人・作る人の健康に配慮して、化学肥料や農薬を控えめにし、丁寧に作った農産物を扱っているのだ―ということを消費者にアピールし、その店の特徴として押し出すことが、売上げ増、固定客の獲得にとって重要なのです。

 このプロジェクトでは、長野県の4カ所の実践モデル直売所を選定し、GAPの導入・「エコファーマー」または「環境にやさしい農産物」、あるいはそれに準じるブランド化を進める取組みを、制度の導入、それも基づく栽培方法や販売方法の講習、実際の売行き調査とその報告などの多方面に渡りサポートして行きます。
 2月中旬より公募をしてきましたが、応募があった直売所のうちから、表2のようにモデル直売所を選定させてもらいました。

タイトルなし

 この4つの直売所での取組みは、本誌「産直コペル」、季刊「産直新聞」で報告するほか、「環境にやさしい農業」実践直売所育成事業の特別ホームページ(長野県のホームページからも、産直新聞のホームページからもアクセス可能。4月下旬公開予定)で順次紹介して行きます。

(平成26.4.10 産直コペルvol.5より)
アグニコ

安心安全な農作物の生産・販売・購入を支援するwebサイトをオープンしました! 手間のかかる防除履歴のチェック作業を手助けする「農薬適用判定navi」と、使用可能な農薬をカンタンに検索できる「農薬info」をテスト運用中です。ただいまユーザー募集中! 登録のお申込み・お問合せは産直新聞社まで。

GAPとは

GAPとは「Good Agricultural Practice」の略で〝良い農業の実施〟の意味。「人間の健康」「自然の環境」を守り、「持続的農業」生産を行い、消費者に信頼される健全な農業を実践することです。科学的知見に基づきながら、食品安全だけでなく、環境保全や労働安全など幅広い分野を対象とし、法令やリスクを認識しつつ、持続的な農業生産を目指します。

記事一覧