地元、信州の農・食・暮らしを発信 ―さんちょく新聞より―

直売所論考 直売所は地域の食文化の伝道所

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 信州には季節ごとに様々な作業や行事があり、昔から、それに合わせた、なくてはならない伝統的な行事食があります。本号で焦点を当てている「おさなぶり」や「おこひる」で楽しむ、ちょっとお腹にたまる、幾分甘めのものが多い伝統食は、その代表格です。
 伝統食と言っても、姿かたちや作り方が昔から全く変わっていないわけではなく、時代や生活の変化とともに、少しずつ「現代化」されています。朴葉巻きをいっぱい作っておいて、レンジでチンして食べるなんてのは、その典型例かも。

 こうした地域の伝統食は、人々が実際の暮らしの中で食べ続けることで守られ、引き継がれていきます。
 近年、農業への関心が高まったり、健康食に注目が集まっている中で、地域食がテレビや雑誌などの表舞台に登ることが多くなってきました。著名な調理士やフードコーディネーターの方々が、時に「私がこの伝統食を発掘しました」というような発言をしていることを目にしますが、これは〝西洋人によるインディアンの発見〟と同じような類のずいぶん傲慢な話。発掘・発見され、表舞台に出るずっと前から、地域の暮らしの中で、そこに住む人々が、作り食べて来たのであり、その場面こそが本当の意味での「表舞台」のはずです。

 そんな、農村の暮らしに根ざした地域食・地域の食文化を、農家から消費者に直接伝えることができるのが直売所の大きな魅力です。「ウチはこうやって食べている」「この伝統料理のコツはこの辺り」という話を、出来上がった加工品やその素材を売り買いする時に、しっかりと伝え広げていく―直売所は、地域の食の伝導所です。
 しかし、直売所販売スタッフも徐々にではあれ若返ってきており、食文化を伝えようにも、伝える当の本人=販売スタッフの方が、冷凍食品やレトルト食品頼みの暮らしをしているという皮肉な例も見受けられようになってきてしまいました。
 これではいけない!多くの心ある直売所では、販売スタッフや、出荷農家の若い世代が、自分たち自身もちゃんと地域の食を継承していけるよう、様々な講習会や勉強会を開いています。消費者の皆さんも、そういう催し物に是非ご参加ください。

(平成28.7.21 産直新聞第93号より)